予防・治療について

2023.12.26 犬や猫の心臓の病気とは?|循環器疾患をわかりやすく解説

循環器とは、血液やリンパ液を体中に運ぶ器官の総称で、心臓、動脈、静脈、リンパ管などがこれに含まれます。循環器の病気というと主に心臓の病気を指し、犬や猫においても心臓の病気は非常に多く発生します。

この記事では、犬や猫の心臓病に焦点を当て、その原因、症状、治療法について解説します。

■目次
1.循環器の病気とは何か
2.犬や猫の循環器の主な病気
3.診断や治療方法
4.予防法とご家庭で注意すること
5.まとめ

循環器の病気とは何か

犬や猫の循環器疾患の多くは心臓の病気です。
心臓は血液を全身に送り出す重要な器官であり、その機能が低下すると命に関わる場合があります。

循環器の病気の代表的な症状としては、以下が挙げられます。

咳がなかなか治らない
呼吸が苦しそう (お腹をベコベコさせて呼吸や常に口を開けてハッハッと呼吸をする)
安静時の呼吸数が1分間に30〜40回を越える
散歩中すぐバテて疲れてしまう
あまり散歩に行きたがらない
失神を起こすことがある

心臓病になると血液を全身に送り出す機能が低下します。すると、心臓内の血液量が増加して心臓が大きくなり、心臓内の圧が高まります。
心臓内の圧が高まると、肺から送り込まれるはずの血液を受け入れられなくなり、肺水腫 (=肺に血液の液体成分が溜まり、呼吸困難になる)という病気が発症します。

心臓病の進行などによって肺水腫が悪化すると、以下のような症状が見られます。

歯茎や舌が青紫色に変化する(チアノーゼ)
咳とともに血混じりの泡や液体のようなものを吐く
意識状態が低下する、ぐったりして起き上がれない

犬と猫の肺水腫についての記事はこちら

犬や猫の循環器の主な病気

代表的な犬や猫の循環器の病気をご紹介します。

犬の僧帽弁閉鎖不全症
左心房と左心室を仕切っている僧帽弁に異常が生じて、弁の閉鎖が不完全となり左心室から左心房へ血液が逆流するようになります。特に小型犬で発症が多く、最もポピュラーな心臓病の一つです。

犬の僧帽弁閉鎖不全症の記事はこちら

犬の三尖弁閉鎖不全症
右心房と右心室を仕切っている三尖弁に異常が生じて、弁の閉鎖が不完全となり右心室から右心房へ血液が逆流するようになります。

犬の三尖弁閉鎖不全症の記事はこちら

犬の拡張型心筋症
心臓の筋肉に何らかの異常が起こり、心筋の壁が薄くなることで、心臓の収縮力が著しく低下します。結果として全身に十分な血液を送れなくなります。ドーベルマンやグレート・デーンのような大型犬に多く発生します。

犬の拡張型心筋症の記事はこちら

犬の洞不全症候群
心臓が規則的に拍動するための電気を作る部位(洞房結節)の働きが悪くなることで徐脈などの不整脈が起き、虚脱や失神などの症状を引き起こす病気です。
特に中年齢以降の犬や、ミニチュアシュナウザーやダックスフント、コッカースパニエル、ウエストハイランドホワイトテリアなどの犬種で多く発生します。

犬の洞不全症候群の記事はこちら

猫の肥大型心筋症
心室の心筋が進行性に肥厚して伸縮性が低下すると、心房から流れてくる血液を十分に心室内に受け止められなくなります。やがて鬱血性心不全へと進行し、胸水貯留や肺水腫などの重篤な病気を引き起こします。
猫で最もポピュラーな心臓病の一つです。

猫の肥大型心筋症 の記事はこちら

猫の動脈血栓塞栓症
血管内や心臓内でできた血栓が、血管を塞いでしまって起こる病気です。最も一般的な原因は、肥大型心筋症です。
突然症状が現れ、急速に状態が悪化するため非常に危険な病気でもあります。

猫の動脈血栓塞栓症の記事はこちら

犬と猫の肺高血圧症
心臓から肺へ血液を送る肺動脈の血圧が高くなってしまう病気です。
僧帽弁閉鎖不全症や拡張型心筋症に関連して発症します。

犬と猫の肺高血圧症の記事はこちら

犬と猫の心タンポナーデ
心臓を包む2層の膜 (心内膜)の間の空間である心膜腔内に、大量の液体が急速に溜まることで心臓が拡張できず正常な拍動が抑制されてしまう危険な疾患です。

犬と猫の心タンポナーデの記事はこちら

など、心臓の病気には様々な種類と特徴があります。

診断や治療方法

代表的な犬や猫の循環器疾患の診断法をご紹介します。

・聴診:聴診器を用いて心雑音の有無や呼吸時に肺の音を評価します。

・レントゲン検査:心臓の大きさや肺水腫の有無を評価します。

・心エコー検査心臓の病気を診断する上で最も大切な検査です。超音波を用いて心臓の動きや心臓の中の様子をリアルタイムで確認することで心臓の状態を評価します。

その他の検査として、身体検査で呼吸の状態を確認したり血圧を測定したりすることもあります。

心臓病の治療方法は心臓病の進行度に応じて、強心薬心筋機能を改善させるお薬)や、利尿剤、降圧剤、βブロッカー過剰になった心臓の働きを少し休めて、心臓の機能を保護するお薬)などを組みわせて症状の改善を狙う内科的治療や、肺水腫による呼吸困難の症状が見られる場合は酸素療法を行います。

犬の僧帽弁閉鎖不全症に対して心臓手術が適応となることがありますが、手術の難易度が非常に高く、費用面の問題もあるため現時点では普及した治療法ではありません

予防法とご家庭で注意すること

犬と猫の循環器の病気は根本的に予防することが困難であるため、定期的な健康診断によって早期発見・早期治療することが何よりも大切です。

ご家庭では散歩時の様子や呼吸の状態を注意深く観察し、何か気になることがあればすぐに獣医師に相談してください。

まとめ

心臓病は進行すると命に関わる恐ろしい病気ですが、定期的な健康診断による早期発見と治療でペットの健康を守れます。愛するペットのために、日々の観察と定期健診を心がけましょう。

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