予防・治療について

2023.09.14 犬の三尖弁閉鎖不全症について|フィラリア症や僧帽弁閉鎖不全症により併発することも

三尖弁とは心臓にある弁の一つで、血液が全身から心臓に戻ってきた部屋(右心房)と、戻ってきた血液を肺に送り出す部屋(右心室)の間を仕切っています。犬の三尖弁閉鎖不全症は、この三尖弁がしっかりと閉じなくなることで引き起こされる心疾患です。

今回は、犬の三尖弁閉鎖不全症について解説します。

原因

三尖弁閉鎖不全症は、左心房と左心室の間を仕切る「僧帽弁」の異常で発症する僧帽弁閉鎖不全症が進行し、その結果右心系にも負担がかかることで引き起こされることが多くあります

その他には、心内膜炎や肺高血圧症、フィラリア症などに続発する場合や、生まれつき三尖弁が閉じにくい場合にも発症することが知られています。

僧帽弁閉鎖不全症についてはこちらから
肺高血圧症についてはこちらから
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症状

三尖弁閉鎖不全症は、初期では無症状であることも多いですが、病気が進行すると次のような症状が見られるようになります。

動くとすぐに疲れる
食欲不振
下痢
苦しそうな呼吸
舌や歯茎などの粘膜が白っぽい色や紫色になる(チアノーゼ)
失神

これらの症状が見られた場合には、すぐに動物病院を受診しましょう。

診断方法      

三尖弁閉鎖不全症の診断は、次の方法で診断します。

・身体検査
三尖弁閉鎖不全症で特徴的な心雑音や、腹水などがないかを確認します。

・心電図検査
三尖弁閉鎖不全症の時に見られる異常な所見がないかを確認します。

・X線検査
右心の拡大や腹水などがないかを確認します。

・エコー検査
心臓の形や三尖弁の形に問題がないか、三尖弁で血液の逆流がないかなどを確認します。

治療方法  

治療は次の方法で行われます。

・内科的治療
心臓の負担を減らしたり血圧を下げて心機能を維持できるように、強心剤や利尿剤、血管拡張剤などの薬を服用します。

・食事療法
心臓の負担を減らすために、ナトリウム(塩分)を制限した療法食を使います。

予防法や飼い主様が気を付けるべき点

残念ながら、三尖弁閉鎖不全症を予防する方法はありません。
日頃から愛犬の様子をよく見ることや、定期的な健康診断を受けることが三尖弁閉鎖不全症の早期発見に繋がります
また、発症の原因の一つであるフィラリア症にならないように、しっかりとフィラリアの予防をすることも重要です。
もしも何か気になる症状が見られた場合には、早めに動物病院を受診しましょう。

まとめ

犬の三尖弁閉鎖不全症は、初期ではほとんどが無症状であるため、病気に気付くことが遅れてしまう場合も多くあります。
治療の開始時期がその後を左右するので、病気の早期発見・早期治療のためにも健康診断を定期的に受けるよう心がけましょう。

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〈参考文献〉
・獣医内科学 第2版 小動物編
・犬と猫の治療ガイド2015 私はこうしている 編集 辻本元ら