予防・治療について

2023.10.25 犬と猫の心タンポナーデについて|速やかな治療が必要

犬と猫の心タンポナーデという病気をご存じでしょうか?心タンポナーデとは、心臓を包む2層の膜 (心内膜)の間の空間である心膜腔内に、大量の液体が急速に溜まることで心臓が拡張できず正常な拍動が抑制されてしまう危険な疾患です。

今回は犬と猫の心タンポナーデについて詳しく解説します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法や飼い主が気を付けるべき点
6.まとめ

原因

犬の心タンポナーデの主な原因として、腫瘍性 (血管肉腫や大動脈小体腫瘍など)、交通事故などが原因の外傷性、心不全、特発性 (原因が分からない)などが挙げられます。

猫の心タンポナーデの主な原因として、肥大型心筋症、リンパ腫、猫伝染性腹膜炎などがあり、発生率は犬よりも低いです。

症状

心タンポナーデは、数分単位で病状が悪化していく非常に危険な疾患であり、いち早く動物の異変に気づき、速やかに治療を受けることが求められます
主な症状としては、以下が挙げられます。

元気の消失
食欲の低下
虚脱 (心臓が正常に機能しないためショック状態になること)
胸水や腹水が貯留する (胸腔内や腹腔内に体液が貯まる)ことでお腹周りが膨らむ
呼吸困難
急にふらついたり倒れる
散歩に行きたがらない
心タンポナーデの原因に、腫瘍性疾患などの基礎疾患がある場合は、その基礎疾患に関連した症状が見られることもあります。

診断方法

診断は、身体検査 (外観の様子や心音聴取、血圧測定など)によるショック症状の確認、胸部レントゲン検査によって円形状に拡大した心臓の確認や心エコー検査によって心膜腔内の液体貯留を確認することで行います。

治療方法

心タンポナーデが疑われた場合は直ちに治療を開始しなければなりません
まずはショック症状に対処するため、静脈ルートの確保、酸素投与や心電図モニター装着を行います。
そして心タンポナーデの治療で最も重要なことは、心膜腔内に貯留した体液による心臓の圧迫を解除することです。エコーガイド下で心膜腔に針を刺して心膜腔内に貯留した体液を抜いたり、胸腔鏡を用いて心膜を切除する治療を行います。

予防法や飼い主が気をつけるべき点

心タンポナーデを予防することは難しいですが、半年〜1年に1回は定期的な健康診断を実施して腫瘍性疾患や心臓病などを早期に発見することが大切です。血液検査の結果からは心タンポナーデを予測することはできないため注意しましょう。

飼い主様が気をつけるべき点は、普段から動物の様子を注意深く観察する、定期的な健康診断を受けさせる、異変を感じたらすぐに動物病院を受診することです。日ごろから愛犬、愛猫の健康や様子を気にかけ、何かあったらいつでも当院までご相談ください。

まとめ

犬と猫の心タンポナーデは、治療開始が遅れると命を落とす非常に危険な疾患です。心タンポナーデの多くの症例で、背景には原因となる基礎疾患が潜んでいるため、定期的に健康診断を受けて全身の状態を把握することが重要です。

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