予防・治療について

2026.10.09  犬の僧帽弁閉鎖不全症|心雑音を指摘されたときの検査と治療の進め方

動物病院での健康診断や診察の際に「心臓の音に雑音があります」と伝えられたことはありませんか?

犬の僧帽弁閉鎖不全症は、咳も息切れもなく、普段と変わった様子がない段階で、心雑音だけが先に見つかることの多い病気です。

この記事では、心雑音を指摘された段階で心臓に何が起きているのか、当院での検査と治療の進め方、ご家庭で確認していただきたい変化についてご説明します。

■目次
1.僧帽弁閉鎖不全症とは|心雑音を指摘されたときに心臓で起きていること
2.ご家庭で気づきたい病気の進行に伴うサイン
3.当院での検査の進め方
4.進行度に応じた治療方針
5.治療を始めてからの通院と、ご家庭でのケア
6.よくある質問(FAQ)
7.まとめ|大崎市古川で心臓病の検査・治療を受けるなら

僧帽弁閉鎖不全症とは|心雑音を指摘されたときに心臓で起きていること

僧帽弁は、心臓の左心房と左心室の間にある弁で、血液の逆戻りを防いでいます。

僧帽弁閉鎖不全症は、この弁が加齢とともに変性し、閉じきらなくなる病気です。弁にできた隙間から血液の一部が逆流するため、心臓には通常より大きな負担がかかります。

この逆流の音が、聴診で心雑音として聞こえます。

原因ははっきりとは分かっていませんが、遺伝的な要因が関わっていると考えられています。
実際に、僧帽弁閉鎖不全症は小型犬で多く見られる病気です。日本では小型犬の飼育頭数が多いため、身近な心臓病のひとつといえます。

当院でも、次のような犬種を診察する機会があります。

・チワワ
・トイ・プードル
・ポメラニアン
・ミニチュア・シュナウザー
・キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル など

しかし、これらの犬種すべてが発症するわけではなく、該当しない犬種でも見られます。

▼キャバリアの心臓病についてはこちらから

<動物病院で心雑音を指摘されたら?>

僧帽弁閉鎖不全症では、症状がない段階で心雑音だけが見つかることがあります。ただし、聴診だけでは逆流の程度や心臓への負担までは分かりません。そのため、各種検査で心臓の大きさなどを確認し、治療を始める段階かどうかを判断します。

心臓の拡大が治療開始の基準に達していなければ定期的に経過を確認し、一定の基準に達した段階で治療を開始します。「様子を見ましょう」と獣医師から言われた際も、次回の検査時期を決めて変化を追っていくことが大切です。

僧帽弁の変化が軽い段階では、はっきりした心雑音や症状が見られないこともあります。心雑音の有無にかかわらず、特にシニア期の犬は定期的に健康診断を受けるなどして、心臓の状態を確認しておくと、変化に気づきやすくなります。

▼心雑音についてはこちらから

ご家庭で気づきたい病気の進行に伴うサイン

僧帽弁閉鎖不全症が進行すると、以前ほど走らなくなったり、散歩の途中で立ち止まったりする変化が気づけることがあります。「運動を嫌がるようになった」「疲れやすくなった」と感じることもあるでしょう。

また、興奮したときや夜間から早朝にかけて咳が出る場合も変化のひとつです。ただし、犬の咳は気管や気管支など呼吸器の病気でも起こるため、咳だけで心臓病と判断することはできません。気になる咳が続く場合は、一度診察を受けることをおすすめします。

▼咳の音やタイミングによる見分け方は、こちらで詳しくご説明しています

<安静時の呼吸数の数え方>

心不全が進むと呼吸数が増えることがあるため、ご家庭で安静時の呼吸数を確認しておくと、変化に気づく手がかりになります。

・眠っているときや、静かに横になっているときに数える
・胸やお腹が上下する回数を15秒間数え、4倍する
(眠っているときは、1分間に30回前後までにおさまることが多い)
・数値は日付と併せて記録し、来院時に獣医師に伝える

当院では、ひとつの目安として「1分間に40回を超える状態が続く」ようであれば、一度受診をおすすめしています。

<すぐにご連絡いただきたい状態>

僧帽弁閉鎖不全症は症状が落ち着いていても、急に悪化することがあります。特に肺に水が溜まる肺水腫には注意が必要で、次のような変化が表れます。

・呼吸が速く浅くなる
・横になれず、座ったまま苦しそうにする
・舌や歯ぐきの色が青紫色や白っぽくなる

夜間や早朝であっても、すぐに対応できる動物病院へご連絡ください。

▼肺水腫については、こちらで詳しくご説明しています

当院での検査の進め方

心雑音を指摘されたあと、当院では次のような流れで心臓の状態を確認していきます。

・聴診
心雑音の大きさ(グレード)や聞こえる位置を確認します。

・X線検査
心臓の大きさと、肺に水が溜まっていないかを確認します。

・心エコー検査
心臓が動いている状態で、逆流の程度や弁の動きを評価します。

必要に応じて、不整脈を確認するための心電図検査や、腎機能・電解質など全身状態を確認するための血液検査を追加します。

これらの検査はすべて当院で受けることができ、通常、検査から結果のご説明や必要なお薬の処方までを含めた所要時間は約30分です。

<心エコー検査で確認すること>

心エコー検査は、原則として麻酔をかけずに行える、体への負担が比較的少ない検査です。横になった状態などで胸に超音波を当て、心臓の中をリアルタイムの画像(動画)で確認します。

この検査では、僧帽弁からの血液の逆流の状態や左心房・左心室の広がりなどを確認し、治療開始の判断材料とします。

犬の心エコーの写真:赤や黄色の色が見える

▲色のついた部分で、心臓内の血液の流れを見る

 

犬の心エコーの写真:青の部分が広がって見える

▲左心房へ血液が逆流する動きを確認できる

進行度に応じた治療方針

犬の僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の大きさや心不全の有無によって進行度(ステージ)を確認し、治療方針を決めます。

<心臓の拡大が治療開始の基準に達していない段階(ステージB1)>

僧帽弁からの逆流はあるものの、心臓の拡大がステージB2の基準に達していない状態です。この段階では内服は始めず、定期的な検査で経過を見ます。

<心臓が一定以上拡大した段階(ステージB2)>

逆流の負担によって左心房や左心室が拡大し、治療開始の基準を満たした状態です。

当院では、このステージB2から内服を開始します。B2の段階で治療を始めることで、心不全を発症するまでの期間を延ばせることが報告されています。

<心不全を発症した段階(ステージC・D)>

病気が進行し、肺水腫などの心不全を起こした段階です。「呼吸が速い」「苦しそうにする」などの症状が表れます。

このうち、標準的な治療では症状のコントロールが難しく、最も進行した状態をステージDと呼びます。ステージCと治療の考え方は大きく変わりませんが、薬の種類や量の調整をより細かく行い、ご家庭での管理と合わせて、できるだけ穏やかに過ごせる状態を目指します。

治療では、病状や全身状態によって、内服薬による心臓への負担の軽減や、酸素室での呼吸管理、外科手術が治療の選択肢になる場合があります。

治療を始めてからの通院と、ご家庭でのケア

僧帽弁閉鎖不全症は、進行度に応じた治療や定期的な管理を生涯にわたって続けていく病気です。

定期的に再検査を受け、心臓の大きさや体重、ご家庭で記録した呼吸数などを確認し、必要に応じて薬の種類や量を調整します。

ご家庭では、愛犬のために次のようなケアができます。

・安静時呼吸数を定期的に測り、記録に残す
・体重の増減を把握しておく
・塩分の多いおやつや人の食べ物を控える
・息切れするような無理な運動は避ける

治療の目的は、心不全の発症や症状の悪化をできるだけ遅らせ、その子らしく過ごせる時間を長くすることです。当院では、生活の質(QOL)にも配慮しながら、飼い主様と愛犬をサポートいたします。

よくある質問(FAQ)

Q. 心雑音があると言われましたが、すぐに治療が必要ですか?
進行度によります。当院では、心臓の拡大が一定の基準に達したステージB2から内服を開始しています。そこに至っていない段階では、経過観察としています。

Q. 薬は一生飲み続ける必要がありますか?
原則として継続して服用する必要があります。症状が落ち着いていても、薬を中止すると治療によって保たれていた状態が崩れ、心臓への負担が増える可能性があるためです。

Q. どのくらいの頻度で検査を受ければよいですか?
重症度によって変わります。それほど重度でない場合はおおむね1〜4か月に1回、重度の場合は毎月を目安にしています。

Q. 僧帽弁閉鎖不全症で咳が出ていたら、もう手遅れでしょうか?
僧帽弁閉鎖不全症で咳が出ていても、手遅れということではありません。原因や状態に応じた治療によって、咳が落ち着く場合もあります。

まとめ|大崎市古川で心臓病の検査・治療を受けるなら

犬の僧帽弁閉鎖不全症は、症状が出るよりも先に、心雑音として見つかることの多い病気です。その段階で逆流の程度と心臓の大きさを調べておくと、治療を始める時期を検討するための判断材料になり、次の治療やケアについても考えることができます。

大崎市古川にある当院では、心臓について気軽にご相談いただき、必要な検査を受けていただける体制を整え、温かみのある診療環境づくりを心がけています。
健康診断や予防接種で心雑音を指摘された方、すでに投薬中で今の状態が気になる方は、お気軽にご相談ください。

【監修者】アイ動物クリニック院長 瓜生 風馬(獣医師)

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