2024.05.08 犬の胸水について|愛犬の命を守るために知っておくべきこと
胸水は、肺や心臓を取り巻く胸腔内に液体が異常に蓄積することで起こり、肺が正常に膨張することを妨げ、呼吸機能に深刻な影響を与えます。
胸水が多量に溜まると、肺が圧迫されるために十分に広がらず、呼吸が荒くなることがあり、これにより酸素不足が発生することで、皮膚や粘膜が青白く変色するチアノーゼを引き起こすことがあります。
今回は犬の胸水について、症状や治療方法、予防方法などを解説します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
原因
胸水は犬の胸腔内に異常な量の液体が蓄積する状態であり、肋骨、横隔膜、背骨に囲まれた空間にある重要な臓器、つまり心臓、肺、気管支、食道、大動脈などに悪影響を及ぼします。
通常、健康な動物の胸腔内には少量の液体が存在し、これは臓器の動きを滑らかにして摩擦を減少させる役割を担っています。しかし、何らかの障害によってこの調節機能に障害が起きると過剰に液体が溜まり、呼吸困難などの重篤な症状を引き起こします。
胸水を引き起こす原因は以下のように多岐にわたります。
・僧帽弁閉鎖不全症など心臓病
・胸腔内の悪性腫瘍(がん)
・横隔膜ヘルニア
・フィラリア症
・肺炎や気管支の炎症
・低アルブミン血症などの全身性疾患
・外傷
・腎臓病
・肝臓病 など
胸腔内に溜まる液体の性質はその成分によって異なり、乳白色のリンパ液が主成分の乳び胸、膿が主成分の膿胸、血液が主成分の血胸などがあります。
また、それぞれの胸水の種類によって考えられる原因も異なります。
・乳び胸:原因不明のことが多いものの、真菌性肉芽腫、縦隔内リンパ腫、心筋症、先天性心疾患などが原因であることがあります。
・膿胸:異物の侵入、外傷、食道裂孔などからの感染拡大が原因で起こることがあります。
・血胸:主に外傷や胸腔内腫瘍の影響で起こることが多く、凝固障害や肺葉捻転なども原因として考えられます。
症状
胸腔内に液体が溜まると肺は正常に拡張できなくなり、呼吸困難に陥ります。
肺が十分に空気を取り込めなくなるため、一回の呼吸が浅くなり呼吸の回数の増加や、酸欠状態によりチアノーゼを引き起こし、舌が青くなるなどの症状が見られることがあります。
加えて、運動不耐性が生じて少しの活動で疲れやすくなる、食欲不振、肺が圧迫されることで咳が頻発する、などの症状が見られることもあります。
診断方法
胸水が疑われる場合の診断は、まず犬の呼吸状態、心音、胸部の聴診を含めた身体検査を行います。
次に、胸部のレントゲン検査を実施して胸腔内の液体の存在と量を確認します。
さらに、胸水が発生した原因を特定するために血液検査、全身のレントゲン検査、超音波検査、必要に応じてCT検査を行います。
超音波検査のガイド下で、肋骨の間から針を刺して胸水を採取し、その性状を分析する胸水検査も診断に役立ちます。
治療方法
胸水の治療は原因となる病気への対処です。しかし、重度の呼吸困難がある場合は、肋骨の間に針を挿入するか、胸腔内にドレーンを設置して胸水を抜きます。これにより、一時的に呼吸が楽になるものの、胸水の原因が解決されなければ、液体は再び蓄積する可能性があります。
心臓疾患が胸水の原因である場合は、心臓の機能をサポートするための薬物療法が行われ、肺疾患が原因である場合は、適切な抗生物質の投与やその他の治療が必要となります。
さらに、胸腔内の液体が漏出液である場合、利尿剤の投与によって体外への液体の排出を促し、胸水の再蓄積を防ぐための維持療法が効果的です。
予防法やご家庭での注意点
胸水の症状は原因となる病気の末期状態として現れることが多いため、愛犬の健康状態を定期的にチェックすることが非常に重要です。
愛犬が異常に疲れやすい、呼吸が速い、食欲がないなどの症状が見られた場合は、すぐに獣医師に相談しましょう。
まとめ
犬の胸水は、呼吸器系や循環器系の重要な問題が隠れている可能性があるため、早期発見と早期治療が非常に重要です。
愛犬の様子に異変を感じた際には、ぜひ当院にご相談ください。
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