2025.11.17 キャバリアの心臓病|生まれながらのリスクと向き合う飼い主様へ
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは、穏やかで愛情深く、人との関わりを好む家庭犬としてとても人気の高い犬種です。つぶらな瞳とやわらかな被毛、そして人懐っこい性格で、家族の中心として愛される存在です。
一方で、遺伝的に心臓病(特に僧帽弁閉鎖不全症)にかかりやすい犬種としても知られています。
僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の弁がうまく閉じなくなることで血液が逆流し、心臓に負担がかかる病気です。ですが、遺伝的な要因を正しく理解し、早期に異常を見つけて日常生活でケアしていけば、長く穏やかに過ごすことも十分に可能です。
今回は、キャバリアの僧帽弁閉鎖不全症について、原因や進行段階ごとの治療、そして日常でできるケアのポイントを解説します。

■目次
1.キャバリアが心臓病になりやすい理由
2.ACVIM分類で見る僧帽弁閉鎖不全症の進行段階
3.検査と治療の流れ
4.日常でできるケア
5.まとめ|遺伝を知って前向きなケアを
キャバリアが心臓病になりやすい理由
キャバリアは、僧帽弁閉鎖不全症(Mitral Valve Disease:MVD)の発症率が高いことが知られています。心臓の左心房と左心室をつなぐ僧帽弁の構造が生まれつき弱い子が多く、遺伝的な関与が大きいと考えられています。
▼犬の僧帽弁閉鎖不全症についてはこちらから
また、キャバリアは他の犬種と比べて、比較的若い年齢から心雑音が確認されることがあります。5歳前後で初期症状が見られるケースもありますが、発症が早いからといって、重症化も早いとは限りません。定期的な健康チェックと飼い主様の日頃の観察によって、進行を遅らせることができるケースも多くみられます。
「心臓病」と聞くと不安に感じるかもしれませんが、正しい知識と早めの対応が穏やかな日々を守ることにつながります。遺伝的なリスクがあっても、定期検査と生活環境の工夫によって、負担を減らしながら過ごせることを知っておきましょう。
ACVIM分類で見る僧帽弁閉鎖不全症の進行段階
僧帽弁閉鎖不全症は、アメリカ獣医内科学会(ACVIM)の分類をもとに以下の5段階に分けられます。どの段階にあるかを把握することで、治療の必要性や今後の管理方針の目安になります。
| ステージ | 状態の概要 | 主な対応 |
| A | 症状・心雑音はないが遺伝的リスクあり
(キャバリアは生まれつきここに該当) |
定期検診で早期発見を目指す |
| B1 | 心雑音あり・心拡大なし | 定期的な検査と生活管理 |
| B2 | 心拡大あり(投薬の開始目安) | 強心薬・血管拡張薬による治療 |
| C | 咳や呼吸困難などの症状が出現 | 利尿剤を追加し、環境を整える |
| D | 薬でコントロール困難な段階 | 酸素室などでの在宅管理を検討 |
Aの段階では治療は必要ありませんが、定期的な心臓検査によって変化を早めに察知することが大切です。
<初期症状のサイン>
初期のうちは目立った症状が出にくいこともありますが、日常の中に心臓からの小さなサインが隠れていることがあります。次のような様子が見られたら、早めに動物病院へご相談ください。
・咳をする(特に寝る前や運動後)
・呼吸が速い、または苦しそう
・散歩を途中で嫌がる・疲れやすい
・元気や食欲が落ちている
・舌や歯ぐきの色が紫っぽく見える
早めに相談することで、より正確に原因を見極め、適切なケアへつなげることができます。「少し気になるかも」と思った段階で構いません。様子を見ずに相談していただくことが、早期発見の大きな助けになります。
検査と治療の流れ
心臓病の検査や治療というと「難しそう」「うちの子に負担がかかるのでは」と不安に思われる飼い主様も多いかもしれません。実際には、症状や心雑音の程度に応じて検査内容を調整し、できるだけ負担の少ない方法で総合的に判断していきます。
<主な検査>
キャバリアの心臓病を診断する際には、次のような検査を組み合わせて行うのが一般的です。
・胸部レントゲン検査
心臓や肺の大きさ、胸水の有無などを確認します。
・胸部超音波(エコー)検査
心臓の弁の動きや血流の異常を詳しく観察し、僧帽弁の状態を確認します。
・心電図検査
不整脈が疑われる場合に追加し、心臓のリズムを調べます。
・血液検査
腎臓の働きや電解質のバランスを確認し、投薬の安全性を判断します。
これらの結果をもとに、症状の重さや全身状態を丁寧に見極めながら、最も適した治療方針を決定します。
<当院での検査費用の目安>
アイ動物クリニックで実施する場合の基本的な検査費用の目安は以下のとおりです。
・胸部レントゲン検査(2方向):3,000円
・胸部超音波(エコー)検査:初診 7,000円(再診時は別途お問い合わせください)
検査内容や回数は症状に応じて調整しますので、詳細は診察時にご案内いたします。
<治療の考え方>
治療の内容は、先ほどご紹介したACVIM分類のステージだけでなく、その子の体力・年齢・生活環境を総合的に判断して決定します。同じステージでも、生活スタイルや体調によって必要な薬の種類や量が異なることがあります。
治療を始めるタイミングや組み合わせを見極めるには、定期的な検査で経過を確認することが大切です。症状を早めに把握し、丁寧に経過を追っていくことで、無理なく穏やかな生活を続けられるケースも多くあります。
当院では、心臓・循環器疾患の診断から長期的なケアまで、一貫してサポートしています。治療内容や今後の見通しについて不安があるときは、どうぞお気軽にご相談ください。
日常でできるケア
心臓病と聞くと、どうしても不安な気持ちが先に立ってしまうかもしれません。ですが、日常の中で少し意識するだけでも、心臓への負担を減らし、穏やかな毎日をサポートすることができます。
・体重のチェック:急な増減は、心臓への負担やむくみのサインになることがあります。
・呼吸を観察:安静時に速い・苦しそうなどの変化があれば注意が必要です。
・運動の調整:軽い散歩など、体調に合わせて無理のない範囲で行うことが大切です。
・食事管理:おやつや人の食べ物など、塩分の多い食品は与えないようにします。
・ストレス軽減:安心できる静かな環境を整え、規則正しい生活を意識しましょう。
キャバリアは遺伝的に心臓への負担がかかりやすい犬種です。症状が出ていなくても、定期的な検査を続けることが、安心して暮らすためのいちばんのケアにつながります。
まとめ|遺伝を知って前向きなケアを
キャバリアは、生まれつき心臓病のリスクを持つ犬種です。しかし、早期に異常を見つけて適切な治療やケアを行えば、穏やかで幸せな時間を守ることができます。「遺伝だから仕方ない」とあきらめるのではなく「知って守る」ことが大切です。
アイ動物クリニックでは、心臓や循環器の診療に関する豊富な知見と経験をもとに、診断から治療、そしてその後の生活サポートまで、飼い主様との丁寧な対話を大切にしながら「その子に合わせた医療」を提供しています。気になることやご不安があるときは、どうぞお気軽にご相談ください。
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