予防・治療について

2023.12.27 犬と猫の肺水腫について|肺に水が溜まる危険な病気

肺水腫とは何らかの原因で肺に水が溜まった状態のことで、命にもかかわる非常に危険な病気です。
肺は空気中の酸素を体内に取り込み、不要な二酸化炭素を体外に排出するガス交換のはたらきを持ちます。肺に水が溜まるとこのガス交換が十分にできなくなるため、呼吸が苦しくなり最終的に命を落としてしまいます。
肺水腫は、心臓病を持つ犬や猫で起こりやすいですが (=心原性肺水腫)、まれに心臓病でなくても起こることがあります (=非心原性肺水腫)。

この記事では犬と猫の肺水腫の原因や症状、治療法などを詳しく解説します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

原因

心原性肺水腫は犬の場合、僧帽弁閉鎖不全症や拡張型心筋症などが、猫の場合は肥大型心筋症などの心臓の病気が原因となって発生する場合があります。

心臓病が進行すると、心臓のポンプ機能が低下し、十分な血液を全身に送り出せなくなります。
すると、次第に心臓内の血液量が増加して心臓が大きくなり、心臓内の圧が高まります。
心臓内の圧が高まると肺から送り込まれる血液を受け入れられなくなり、左心房→肺静脈→肺の毛細血管の順番に圧が上昇し、肺のうっ血が起こって肺水腫を発症します。

一方で、非心原性肺水腫は心臓病が関与しない肺水腫であり、肺腫瘍や肺炎、交通事故などによる肺の外傷、長時間のてんかん発作、熱中症、アナフィラキシーショックなどが原因としてあげられます。肺に炎症が起きることで肺の血管から血液成分が滲み出てきて肺水腫を発症します。
さらに、過剰な点滴によって体内の水分量が多くなりすぎることでも肺水腫になることがあり、このような肺水腫を医原性肺水腫と呼びます。

犬の僧帽弁閉鎖不全症の記事はこちらから
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症状

肺水腫は肺でのガス交換が十分にできなくなるため、酸素不足や呼吸困難による症状がみられます。
初期症状としては、以下のような症状があります。

元気、食欲が低下する

落ち着きがなくなり、そわそわすることが増える

散歩に行きたがらない

呼吸が速く、荒くなる

口を開けて、ハッハッという呼吸をする

咳をする

 

心臓病の進行などによって、肺水腫が悪化すると以下のような症状がみられます。

歯茎や舌が灰白色〜青紫色に変化する(チアノーゼ)

咳とともに血混じりの泡や粘液のようなものを吐く

意識状態が低下する

肺水腫は治療せずに放置すると確実に死に至るため、上記のような症状がみられたら、直ちに動物病院を受診してください

診断方法

肺水腫は、身体検査、血液検査、レントゲン検査、心臓のエコー検査の所見を総合的に判断して診断します。

・身体検査:呼吸の様子や呼吸数、チアノーゼの有無、心音などを確認します。

・血液検査:脱水の有無や、腎臓の数値 の確認(利尿剤は腎臓に負担がかかることが多い)、全身状態の把握のために血液検査を行います。

・レントゲン検査:肺水腫の診断においてレントゲン検査は非常に重要です。心臓の大きさや肺に水が溜まっていないかどうかを確認します。

・エコー検査:心原性肺水腫は心臓病が原因となっているため、エコー検査で心臓に異常がないか確認します。

治療方法

肺水腫の治療は原因となっている基礎疾患に対する治療と、肺水腫による呼吸状態の悪化を改善する対症療法の二つを同時並行で行う必要性があります。
心原性肺水腫の場合は、肺に溜まった余分な水分を取り除き、尿として排出させるために利尿剤を投与します。心臓病に対する投薬 (強心薬やACE阻害剤、血管拡張薬など)も必要となります。

呼吸困難の症状がみられるときには酸素の投与を行います。酸素の投与は酸素室の中で行うことが基本であるため、入院の必要があります。(最近はレンタル酸素室のサービスを行う会社が増え、自宅で酸素の投与を行うことが可能な場合もあります)

非心原性肺水腫の場合も原因となっている疾患の治療と、利尿剤の投与、呼吸状態の改善のための酸素投与などを行います。

予防法とご家庭で注意すること

残念ながら肺水腫を根本的に予防することは困難であるため、心原性肺水腫の原因である心臓病を早期発見・早期治療することが何よりも大切です。
日本では非常に数の多い小型犬は僧帽弁閉鎖不全症を発症するリスクが高いため、6~7歳の中年期を迎えたら、半年に1回は動物病院で健康診断を受けましょう

まとめ

肺水腫は非常に危険な疾患であり、治療が遅れた場合は死に直結します。
普段から愛犬、愛猫の呼吸状態には注意し、少しでも呼吸に異変を感じたらすぐに動物病院を受診してください。
心臓病を治療中の場合は特に注意が必要であるため、定期的に獣医師による診察を受けるようにしましょう。

※先述のリンク先と同じです。
犬の僧帽弁閉鎖不全症の記事はこちらから
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