2025.10.29 【獣医師解説】犬や猫の呼吸困難|心臓病や肺の病気との関係と受診の目安
愛犬や愛猫の呼吸が「いつもより荒い」「速い」「苦しそう」と感じたことはありませんか?
呼吸の異常は体が発しているSOSのサインであり、原因の中には命に関わる病気が隠れている場合もあります。
今回は、犬や猫の呼吸困難について、考えられる原因や注意すべき症状、受診の目安を獣医師の視点から解説します。

■目次
1.呼吸困難とは?正常な呼吸との違いを知ろう
2.犬・猫の呼吸困難を引き起こす主な原因
3.呼吸困難のときに見られる危険なサイン
4.動物病院での診察と治療の流れ
5.まとめ
呼吸困難とは?正常な呼吸との違いを知ろう
呼吸困難とは、肺や心臓などに異常が生じ、体内に十分な酸素を取り込めなくなっている状態を指します。呼吸をするのがつらく、体に大きな負担がかかっている状態です。
▼健康な犬猫の呼吸数(安静時の目安)
・犬:1分間に約10〜35回
・猫:1分間に約20〜40回
※眠っているときは、これより少なくなることもあります。
呼吸数を確認するときは、寝ているときや落ち着いているときに胸やお腹の上下運動を数えるのがおすすめです。1回の「吸って・吐いて」で1呼吸と数え、15秒で数えた回数を4倍するとおおよその1分間の呼吸数が分かります。
もし明らかに回数が多い、息が荒い、胸やお腹の動きが大きいなどの変化が見られたら、注意が必要です。
呼吸困難は肺や気管などの呼吸器の異常だけでなく、心臓や全身の循環の異常によっても起こることがあります。つまり「息が苦しそう」という一見シンプルなサインの裏に、さまざまな原因が潜んでいるのです。
犬・猫の呼吸困難を引き起こす主な原因
呼吸困難の原因は大きく分けて、呼吸器の異常・心臓や循環器の異常・その他の全身性の要因の3つがあります。
<呼吸器の異常によるもの>
呼吸の通り道や肺のトラブルで、空気の出入りがスムーズにいかなくなるタイプです。
・気管支炎や肺炎:感染やアレルギーが原因で炎症が起こる
・気管虚脱(犬に多い):気管が押しつぶされ、空気が通りにくくなる
・肺水腫・胸水:肺や胸の中に液体がたまって息苦しくなる
これらは重症化すると命に関わるため、早期の対応が大切です。
犬と猫の肺水腫についてはこちらから
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<心臓や循環器の異常によるもの>
血液を全身に送る心臓の働きが低下すると、体内に十分な酸素が行き渡らなくなり呼吸が苦しくなります。
・僧帽弁閉鎖不全症(犬に多い):心臓の弁が閉まりにくくなり、血液が逆流する
・肥大型心筋症(猫に多い):心臓の壁が厚くなり、ポンプ機能が落ちる
・肺高血圧症・心不全・心タンポナーデ:心臓や肺の血流に負担がかかり、呼吸困難を起こす
このほかにも、フィラリア症や動脈血栓症など心臓や血管の異常によって呼吸が苦しくなるケースもあります。
犬の僧帽弁閉鎖不全症についてはこちらから
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<その他の原因>
呼吸器や心臓以外の異常によっても、体内の酸素が不足し呼吸が乱れることがあります。
・熱中症:体温上昇により呼吸が浅く速くなる
・腫瘍・外傷・貧血:酸素が体に届きにくくなる
・甲状腺機能亢進症(特に高齢猫):代謝が活発になり、呼吸が荒くなる
これらは一見「呼吸の病気」ではなくても、結果として呼吸困難を引き起こす原因になるため注意が必要です。
呼吸困難のときに見られる危険なサイン
呼吸の乱れは、体が苦しさを訴えているサインです。次のような様子が見られたときは、できるだけ早く動物病院にご相談ください。
・口を開けて呼吸している(猫では非常に危険)
・呼吸が速く浅い、またはお腹を大きく動かして息をしている
・ゼーゼー・ヒューヒューと音がする
・舌や歯ぐきが紫色・白っぽい(チアノーゼ)
・ぐったりして動かない、意識がもうろうとしている
これらの症状があるときは「少し様子を見よう」ではなく、夜間や休日でも、まずは対応可能な病院に電話で状況を伝えましょう。特に猫は急に状態が悪化することがあるため、早めの判断が大切です。
動物病院での診察と治療の流れ
呼吸が苦しそうなときは、まず呼吸を楽にしてあげることが最優先です。来院時にはすぐに酸素吸入などを行い、呼吸を落ち着かせたうえで原因を探っていきます。
<主な検査・治療の流れ>
呼吸の乱れにはさまざまな原因が関わるため、必要に応じて検査を組み合わせ、総合的に判断していきます。
▼問診・触診
呼吸の乱れが始まったタイミングや、咳・食欲・元気などの変化、これまでの病歴などを丁寧に伺います。
▼各種検査
・レントゲン検査:肺や心臓、胸の中の様子を確認し、肺水腫や胸水などの有無を調べます
・心エコー検査:心臓の動きや形を見て、心臓病が関係していないかを確認します
・血液検査:炎症や貧血、臓器の状態などを確認し、全身の健康状態を把握します
これらの結果をふまえ、症状の背景・重症度・体力などを総合的に判断して治療方針を決定しご提案します。
<治療の一例>
・酸素吸入や点滴(補液):呼吸と循環を安定させ、体への負担を減らします
・内科的治療(投薬など):心臓や肺への負担を和らげるお薬を使用します
・胸水・心嚢液の除去:胸にたまった液体を抜いて呼吸を助けます
慢性的な心臓病や呼吸器疾患が関係している場合には、治療だけでなく、定期的な検査や食事・生活環境の見直しも大切です。当院では、飼い主様と一緒に生活環境や体調の変化を確認しながら、無理のないペースで安心してケアを続けられるようにサポートしています。
まとめ
呼吸の変化は、体の中で起きている異常を知らせる大切なサインです。「少し苦しそうかな」「いつもより呼吸が速い気がする」そんな小さな違和感が、早期発見につながることもあります。
アイ動物クリニックでは、心臓・循環器の診断や治療、再発予防まで一貫してサポートしています。飼い主様と一緒に原因を探り、その子にとって最も安心できる方法を見つけていくことを大切にしています。
呼吸困難は、見た目の落ち着きに反して体に大きな負担がかかっていることがあります。もし呼吸の乱れや気になる様子があれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。
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