予防・治療について

2024.03.06 猫の慢性腎臓病について|初期段階では気づきにくい高齢猫に多い病気

慢性腎臓病は、特に高齢猫に多く見られる一般的な病気です。
腎臓は体内の老廃物をろ過し、不要な物質を尿として排出する重要な役割を担っていますが、慢性腎臓病になると、この機能が徐々に衰えていきます。
一度損傷した腎臓の機能を回復させることはできませんが、適切な管理と治療によって、愛猫の生活の質を向上させ、寿命を延ばすことが可能です。

今回は、猫の慢性腎臓病の原因、症状、治療法などについて詳しく解説していきます。


■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

原因

猫の慢性腎臓病の原因は多岐にわたり、原因を特定することは難しい場合があります。
高齢猫では加齢の伴う腎機能の変化によりその機能が低下しますが、若い猫でも慢性腎臓病になることがあり、その場合は先天的な問題や、ウイルス感染症、腎臓にダメージを与える薬の使用、高血圧、尿路結石症、腎臓の感染症や腫瘍などが原因となることがあります。

また、遺伝的要因も関与しており、ヒマラヤンやペルシャなどの特定の猫種に多い多発性嚢胞腎(腎臓の中に多くの嚢胞が形成されてしまう)なども腎臓の機能低下につながり、慢性腎臓病の原因となります。

症状

症状は初期段階では目立たないことが多く、病気が進行して初めて顕著になります。
最も般的な症状は多飲多尿、つまり異常に多くの水を飲み、その結果として尿の量が増えることです。これに加えて、食欲不振、体重減少、嘔吐、下痢、口内炎などの症状も見られることがあります。

そして慢性腎臓病が進行するにつれて、全体的な活動量が減少し、元気がなくなり、毛並みが悪化することもあります。また、高血圧や貧血など、腎臓病によって引き起こされる他の健康問題も現れるようになります。これらの症状は他の病気でも見られるため、正確な診断と適切な治療のためには詳細な検査が必要です。

 

診断方法

診断は、身体検査や尿検査、血液検査、レントゲン検査、エコー検査の結果を総合的に評価することによって行われます。

身体検査では、脱水がないか、痩せてきていないかを確認します。
また、腎機能が低下すると血圧が上昇しますが、高血圧の状態は腎臓にさらに負担をかけるため、血圧の測定を行い、高血圧かどうかを確認します。
尿検査では尿比重が低下していないか、タンパク尿が見られないかを確認します。

そして診断を確定するためには、血液検査が不可欠です。
血液検査においては、慢性腎臓病ではほとんどの場合、BUN(尿素窒素)、クレアチニン、SDMA、リンの値が上昇します。特にSDMAは、BUNやクレアチニンが上昇する前から異常を示すことがあるため、早期発見に非常に有効です。
その他、カルシウム値の低下も見られる場合があります。なお、カルシウム値については腎性ニ次性上皮状態機能亢進症に移行している症例では数値の上昇が見られることもあるため、注意が必要です。

より詳細な情報を得るために、超音波検査やX線検査を行うこともあります。画像診断検査によって、腎臓のサイズや構造の異常、尿路結石、または他の腎臓や尿路の問題を特定します。

治療方法

慢性腎臓病は進行性の病気であり、現時点で根治できる治療方法は存在しませんが、適切な管理によって病気の進行を遅らせることが可能です。そのため治療は、病気の進行を遅らせ、猫の生活の質を改善することを目的としています。

具体的な治療としては、食事療法や皮下輸液、慢性腎臓病により発生した諸々の症状への対症療法が中心となります。
まず大切なことは、猫の水分摂取量を増やすことです。慢性腎臓病を発症した猫は、腎臓がうまく機能しないために体内の水分を保持できず、脱水状態に陥りやすくなります。
このため、常に新鮮な水を提供し、ウェットフードを食事に加えるなど、愛猫の水分摂取量を増やす工夫をすることが重要です。

食事療法も慢性腎臓病の管理において非常に重要です。
腎臓病専用の療法食を与えることにより、腎臓への負担を軽減します。この療法食は、主にタンパク質、リン、ナトリウムの含有量が制限されており、腎臓の機能を保護するのに役立ちます。また、脱水状態が続くと腎臓に大きな負担がかかり、腎機能が大きく低下するため、皮下輸液を定期的に行います。

そして、慢性腎臓病に関わるさまざまな症状や合併症への対応も重要で、高血圧のコントロール、貧血の治療、尿路感染症への対処なども行います。

 

予防法やご家庭での注意点

慢性腎臓病の予防と管理には、飼い主様の綿密な注意とケアが必要です。愛猫の健康と快適性を維持するために、日常生活でのいくつかの注意点があります。まず、水分摂取を促すことが重要です。猫は水をあまり飲まない傾向がありますので、新鮮な水をいつでも飲めるように複数の場所に水入れを設置することで、愛猫がより多く水を飲むよう促しましょう。
また、塩分量の高いおやつや人間の食べ物を食べさせないことも非常に大切です。

そして、肥満は猫の腎臓病のリスクを高めることが知られていますので、定期的な運動とバランスの取れた食事により、健康的な体重を維持することが大切です。

また、定期的な健康診断も欠かせません。特に高齢の猫は、慢性腎臓病のリスクが高まるため、年に一度以上の健康診断を受けることが推奨されます。早期発見により、慢性腎臓病の進行を遅らせることが可能になります。

 

まとめ

慢性腎臓病は、特に高齢猫に多く見られる疾患であり、一度発症すると完治することは難しいです。しかし、適切なケアと管理によって、愛猫の生活の質を維持し、病気の進行を遅らせることが可能です。
愛猫の行動や健康状態の変化に注意を払い、異変を感じたら迅速に獣医師の診察を受けることが、愛猫の健康を守る上で最も大切です。

 

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