予防・治療について

2023.12.01  猫の尿道閉塞について|特にオス猫に多い病気

皆様は猫の尿道閉塞という病気をきいたことはありますか?
尿が膀胱から体外に排泄されるまでの通り道 (=尿道)に、結石や腫瘍などが詰まって尿が出なくなってしまう病気を尿道閉塞と言います。

この記事では猫の尿道閉塞の原因や症状、診断・治療法などを解説します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

原因

猫は犬と比較して飲水量が少ないことや尿道が細いため、尿道閉塞が発生しやすいです。
特にオス猫の尿道は非常に細く途中でS字状に湾曲しているため、湾曲部で閉塞が生じやすく注意が必要です。
猫の尿道閉塞の理由は様々ですが、以下に代表的な原因を挙げます。

・結石が尿道に詰まる(飲水量の低下、フード由来のミネラル成分の増加など)
・膀胱炎や尿道壁の炎症
・膀胱腫瘍や尿道外の組織の腫瘍による尿道の圧迫

 

症状

尿道閉塞になると溜まった尿を上手く排泄できないため、非常に強い尿意や残尿感を感じます。それゆえ、猫は頻繁にトイレに向かい排尿の姿勢を取りますが尿はほとんど出ません。 (=頻尿・排尿困難)
それ以外にも、不適切な場所で排尿をしようとする、尿がポタポタと漏れる、辛そうに鳴く、元気・食欲が低下するなどの症状が見られます。

また、結石や腫瘍が原因で尿道壁から出血が起きると、血尿が見られることがあります。

 

診断方法

まずは飼い主様から症状を伺い、尿道閉塞が疑われる場合は膀胱を触診します。
膀胱が硬く触れたり、膀胱がパンパンに膨らんでいたりする場合は尿道閉塞の可能性があります

まずはレントゲン検査やエコー検査の画像診断を行って、結石や腫瘍の有無、膀胱の貯尿量などを
確認します。閉塞が確認された場合は、血液検査を実施し血中尿素窒素(BUN)やクレアチニン、電解質の測定も行います。

尿検査も必須の検査であり、尿の色、比重、タンパク質、pH、結石の有無などを確認します。
以上の検査結果を総合的に評価して最終的な診断を行います。

 

治療方法

尿道閉塞の治療はまず閉塞を解除することが優先されます。
尿道にカテーテルを挿入し、人肌に温めた生理食塩水を流して尿道に詰まっている結石などを膀胱に押し戻します。

そして閉塞を解除できたら、血尿がひどい場合は止血薬の投与や、膀胱炎を併発している場合は抗菌薬などを使用します。腎臓への負担が大きい場合には、点滴治療を行います。
結石によって尿道が閉塞していた場合は食事療法を取り入れ、飲水量を十分に確保することで再発を予防します。

また、尿道閉塞が解除できない症例や、尿道閉塞が繰り返して発生する症例については外科手術が適用となります。尿道に詰まった結石や腫瘍を外科的に取り除き、尿道を新しく作り直す「会陰尿道瘻設置術」と呼ばれる手術を行います。

 

予防法やご家庭での注意点

猫は気温が下がると飲水量が低下するため、冬場は尿道閉塞のリスクが高まります
飲水用の食器を複数設置したり、循環式の水飲み器を設置し、飲水を促すようにしましょう。ウェットフードを混ぜることで、食事からの水分摂取量を増やすこともよいでしょう。

また定期的に健康診断を受けることで、尿の状態や尿路結石、膀胱腫瘍の有無などを確認し、尿道閉塞の原因となる疾患を早期に発見することができるでしょう。
ご家庭では、日頃から尿の状態や排尿の回数などを記録することで、異変にいち早く気づけるでしょう。

 

まとめ

猫の尿道閉塞は決して珍しい病気ではなく、オス猫であることや気温の低下はリスク要因となります。
尿道閉塞は早期に発見、治療を開始できれば良好な予後が期待できますが、治療の開始が遅れると急性腎不全や尿毒症などの危険な状態に陥ることもあるため飼い主様と獣医師が協力して未然に防ぐことが大切です。

猫の泌尿器の病気はこちらでも解説しています。
猫の尿路結石は命に関わる病気?症状、原因、予防について

宮城県大崎市を中心に診察を行うアイ動物クリニック
0229-22-3430
診療案内はこちらから