予防・治療について

2025.01.30  猫の糖尿病新薬センベルゴで変わる治療法と注意点

猫の糖尿病は中高齢の猫に多く見られる病気で、適切な管理が求められます。近年、新薬「センベルゴ」が登場し、糖尿病治療に新たな選択肢が加わりました。

今回は、猫の糖尿病に関する基礎知識や、新薬センベルゴの特徴や注意点、日常生活での管理方法までを詳しく解説します。まずは病気についての理解を深め、新薬がどのように治療法を変えるのかをみていきましょう。

■目次
1.猫の糖尿病の基礎知識
2.気づきやすい症状と行動の変化
3.既存の治療法とその課題
4.新薬「センベルゴ」の特徴と効果
5.日常生活での予防と管理
6.よくある質問(Q&A)
7.まとめ

猫の糖尿病の基礎知識

猫の糖尿病は、インスリンの分泌不足やインスリン抵抗性が原因で、血糖値が異常に高くなる病気です。猫の発症率は約1%とされ、特に7歳以上の中高齢猫に多く見られます。肥満や遺伝的要因も発症リスクを高める要因とされています。

人間の糖尿病と猫の糖尿病には共通点がありますが、いくつかの違いもあります。例えば、猫ではⅡ型糖尿病が主であり、インスリンの分泌が可能な場合もありますが、インスリン抵抗性が強いため治療が難しいことが多くみられます。しかし、病気を理解し、適切な治療を行うことで、症状の改善や生活の質の向上が期待できます。

 

気づきやすい症状と行動の変化

猫の糖尿病では、以下のような初期症状が見られることがあります。

 

<初期症状>

多飲多尿:頻繁に水を飲み、尿の量が増える
体重減少:食欲があるのに体重が減る
食欲増加:過剰な食欲がみられる

 

これらが進行すると、以下のような重症化した症状が現れます。

 

<重症化した症状>

脱水症状:水分摂取が追いつかず、脱水状態になる
無気力:活動量が減り、元気がなくなる
嘔吐や下痢:消化器系の問題が発生する

 

これらの症状に気づいたら、早めに獣医師に相談することが大切です。

 

既存の治療法とその課題

猫の糖尿病治療の主軸となっているのはインスリン注射です。インスリンは血糖値を下げる直接的な効果があり、多くの猫で有効とされています。しかし、インスリン注射は毎日行う必要があり、飼い主様にとっても負担が大きい治療法です。また、注射を嫌がる猫の場合、治療の継続が難しくなることもあります。こうした課題を解決するため、近年注目されているのが経口投与が可能な新薬「センベルゴ」です。

 

新薬「センベルゴ」の特徴と効果

センベルゴは猫の糖尿病治療において、経口投与が可能な新しい選択肢です。この薬の最大の特徴は、インスリン抵抗性を改善し、血糖値を安定的にコントロールする点にあります。
具体的なデータによると、センベルゴを使用した猫の約90%で血糖値や症状の改善が確認され、生活の質(QOL)の向上が期待されています。[1]

従来のインスリン治療と比較すると、センベルゴには以下のメリットとデメリットがあります。

 

<メリット>

・経口薬で注射の必要がないため、猫も飼い主様も負担が軽減される
血糖値の安定が期待できる
・注射を嫌がる猫でも治療が継続しやすい

 

<デメリット>

一部の猫には効果が薄い場合がある
・副作用として尿中にケトンが出ることがある
糖尿病性ケトアシドーシスのリスクがある

 

センベルゴは1日1回の経口投与が基本です。猫の体重や血糖値に応じて適切な投与量を調整する必要があり、投与中は定期的な血糖値のモニタリングが欠かせません。

 

日常生活での予防と管理

糖尿病の予防と治療効果を高めるためには、日常生活でのケアが重要です。以下のポイントを意識してみてください。

 

<食事管理>

肥満は糖尿病リスクを高めます。猫用の総合栄養食などバランスの取れた食事を与えて、肥満を防ぎましょう。すでに発症している場合は、糖尿病用フードの導入も効果的です。特に肥満気味の猫では、適切なカロリー管理が重要です。

 

<適度な運動>

猫が無理なく続けられる運動を取り入れ、健康維持をサポートしましょう。おもちゃやキャットタワーを活用すると良い刺激になります。

 

<定期的な検診>

血糖値の変化は猫の状態を的確に把握するための重要な指標です。糖尿病の早期発見治療効果の確認のために、定期的に動物病院で検査を受けましょう。

 

よくある質問(Q&A)

以下に、飼い主様からよくいただく質問をまとめました。

Q:猫の糖尿病の治療は一生続ける必要がありますか?
A:猫の糖尿病の多くはⅡ型糖尿病に分類されます。このため、一部の猫では、インスリンを投与しなくても血糖値を維持できる状態に回復することがあります。ただし、こうしたケースは稀であり、糖尿病の完治は難しいとされています。治療を継続することで猫の生活の質を保つことが重要です。

Q:治療費はどのくらいかかりますか?
A:治療費は治療法によって異なります。インスリン治療の場合は1か月に約1万円程度、センベルゴの場合は1か月に約1万5千円程度です。猫の性格や病状によって最適な治療法は異なります。例えば、注射を嫌がる猫にはセンベルゴのような経口薬が適している場合があります。具体的な費用や治療法については、獣医師と相談することをお勧めします。

Q:センベルゴの副作用はありますか?
A:センベルゴの副作用として、尿中にケトンが検出されることがあります。この状態が進行すると、糖尿病性ケトアシドーシスという命に関わる症状に繋がるリスクがあります。投薬中は、定期的に血糖値や尿検査を行い、異常がないかをチェックすることが重要です。

Q:他の病気と間違えやすい症状はありますか?
A:糖尿病の代表的な症状である多飲多尿は、腎不全など他の病気でも見られる共通のサインです。このため、これらの症状が見られた場合には糖尿病に限らず、さまざまな可能性を考慮して獣医師に相談してください。適切な診断を受けることで、正しい治療を行うことができます。

猫の慢性腎臓病についてはこちらから

 

まとめ

新薬「センベルゴ」の登場により、猫の糖尿病治療には新たな選択肢が加わりました。特に、インスリン注射が難しい猫や、飼い主様の負担を軽減したい場合に有効な治療法です。ただし、副作用や適応の違いがあるため、導入を検討する際は必ず獣医師と相談してください。愛猫の生活の質を向上させるために、最新の治療法を賢く活用しましょう。

また、糖尿病の早期発見・早期治療のためには、日々の観察と定期的な健康診断が大きな役割を果たします。愛猫の健康を守るためには、飼い主様と獣医師が協力してケアを進めていくことが大切です。普段の中で少しでも不安や疑問を感じた際には、ぜひお気軽に当院までご相談ください。私たちスタッフ一同、飼い主様と愛猫が安心して過ごせる毎日を全力でサポートさせていただきます。

 

【参考・参照】
[1]ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパン ホームページ <https://www.boehringer-ingelheim.com/jp/herinkainkeruhaimu-animaruherusu-shiyahan-maoyongjingkoutangniaobingzhiliaoyao-senheruko-15-mg#>(参照:2025-01-21)

 

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