2024.06.17 猫の膀胱炎について|トイレに何回も行くけど、もしかして膀胱炎?
膀胱炎は猫によく見られる病気のひとつで、膀胱の内壁が炎症を起こす状態を指します。この炎症は、細菌感染、結石、ストレスなどさまざまな原因で引き起こされます。
膀胱炎は猫にとって非常につらい状態で、放置すると深刻な健康問題に発展することもあります。そのため、早期に症状を認識し、適切な治療を行うことが重要です。
今回は猫の膀胱炎について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.ご家庭での注意点
6.まとめ
原因
猫の膀胱炎には、主に以下の3つの原因があります。
<細菌性膀胱炎>
細菌が原因で膀胱炎を引き起こします。
特に、トイレが汚れていると猫は排尿を我慢しがちです。その結果、膀胱内の尿が長時間滞留し、細菌が繁殖しやすい環境が作られてしまいます。
また、水を飲む量が少ない場合も、尿の流れが悪くなり、細菌の増殖を助けることになります。このような状況が続くと、細菌性の膀胱炎を発症することがあります。
<結晶性膀胱炎>
膀胱内の状態が悪いと尿中に結晶(砂のようなもの)ができ、この結晶が原因で膀胱炎が発生することがあります。特に食べ物が関係しており、にぼしや鰹節などカルシウムが多いものを摂取すると、結晶が形成されやすくなります。
この結晶がさらに固まると「結石」となり、尿の通り道を塞いでしまうこともあります。特にオス猫は尿道が細いため、結石が詰まりやすくなります。
<特発性膀胱炎>
特発性とは、細菌など明確な原因がない膀胱炎を指しますが、ストレスや肥満が大きく関与していると考えられています。特発性膀胱炎は原因が特定できないため、治療が難しい場合もあります。猫の膀胱炎の中でも多いのがこの特発性膀胱炎です。
ストレスの要因としては、環境の変化、飼い主様とのコミュニケーション不足、新しいペットを迎えたなどが挙げられます。
症状
膀胱炎の症状としては、以下のようなものがあります。
・トイレに頻繁に行く
・少量しか尿を出さない、または全く出ない
・排尿時に痛みを感じるため、鳴き声を上げる
・トイレ以外の場所で排尿してしまう
さらに、膀胱炎が進行すると、吐いたり元気がなくなったり、食欲が低下することもあります。
また膀胱に違和感を覚えるため、お腹を執拗に舐め、その結果として脱毛してしまうこともあります。
診断方法
膀胱炎の診断には、まず尿検査が基本となります。尿検査では、尿の状態や結晶、細菌の有無など、多くの情報を得ることができるため、膀胱炎の診断には欠かせない検査です。
また、超音波検査も行います。超音波検査では膀胱内の様子を直接確認できるため、結晶や結石の存在を確かめることができます。さらに、膀胱の壁の厚さや腫瘍の有無もチェックできるため、膀胱炎の重症度や他の病気の可能性も評価できます。
治療方法
膀胱炎の治療方法は、その原因によって異なります。
<細菌性膀胱炎>
細菌性の膀胱炎には、抗生剤の投与を行います。また、炎症や痛みを伴うため、消炎鎮痛剤(NSAIDs)を処方することもあります。
<結晶性膀胱炎>
結晶性の膀胱炎の場合、結晶を溶かすための療法食による食事療法を行います。食事が原因となることが多いため、おやつを含めた食事全体の見直しが必要です。
さらに、二次感染を予防するために抗生剤を併用することもあります。
<特発性膀胱炎>
特発性膀胱炎はストレスが大きな原因とされており、ストレス管理が重要な治療要素です。繰り返す特発性膀胱炎の場合には、ロイヤルカナンの下部尿路疾患用の療法食(ユリナリーS/O+CLTなど)をお勧めしています。これらのフードにはトリプトファンが含まれており、ストレス軽減に役立ちます。
また、猫のリラックスホルモンを抽出したフェリウェイも使用することで、ストレスをさらに軽減することができます。必要に応じて抗生剤も併用します。
肥満も膀胱炎のリスク因子の1つであるため、ダイエットも治療の一環として行われます。適切な食事管理と運動を通じて、健康な体重を維持することが膀胱炎の予防にもつながります。
ご家庭での注意点
猫はとてもきれい好きな動物であり、トイレの砂を変えるだけでもトイレを我慢してしまうほど繊細です。以下の点に注意して、猫の膀胱炎を予防しましょう。
<トイレを清潔に保つ>
猫が快適にトイレを使えるように、常に清潔に保ちましょう。毎日の掃除と定期的な砂の交換を心がけてください。
<適切なトイレの数>
猫の数に対して+1個のトイレを用意するのが理想的です。たとえば、2匹の猫がいる場合は3個のトイレを用意しましょう。
<トイレの場所に気を使う>
トイレの場所も重要なポイントです。猫が落ち着いて用を足せる静かな場所にトイレを設置しましょう。また、猫は環境の変化に敏感ですので、トイレの配置場所を頻繁に変えないようにすることも大切です。
また、水分摂取も膀胱炎予防には欠かせません。新鮮な水を常に用意し、水飲み場を複数設置することで、猫が自然に水を多く飲むように促しましょう。また、ウェットフードを食事に取り入れることで、水分摂取量を増やすことも効果的です。
まとめ
猫は泌尿器系の病気にかかりやすく、その性格も非常に繊細です。そのため、膀胱炎を予防するためには、猫の習性を理解し、適切な環境を整えることが大切です。
トイレの清潔さを保ち、適切な数と場所にトイレを設置し、十分な水分摂取を促すことで、愛猫の健康を守ることができます。
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