2023.04.28 猫の肥大型心筋症|軽度であると気づきにくい病気
愛猫に、呼吸回数が多い、活動性が落ちた、動きたがらない、口を開けて呼吸をする、咳をする、などの症状はありませんか?
このような症状がみられたら肥大型心筋症の可能性があります。
今回は、猫に多くみられる心臓病のひとつである肥大型心筋症について説明します。
肥大型心筋症の原因
猫の肥大型心筋症は、心臓の筋肉が厚く変形することで心臓の動きに障害が起こり、体へ十分な血液量を送り出すことができなくなる病気です。
本疾患は好発品種が報告されており、メイン・クーン、ペルシャ、ラグドール、アメリカン・ショートヘアにおいて発生頻度が高いとされています。
また、心筋が肥厚する原因には、背景に他の疾患が隠れていることも多く、甲状腺機能亢進症、リンパ腫、成長ホルモン過剰症などの疾患がある可能性があります。
肥大型心筋症の症状
肥大型心筋症の症状は、軽症から重症まで様々な症状を示します。
主な症状は、呼吸回数が多い、活動性が落ちた、動きたがらない、口を開けて呼吸をする、咳をする、などがあげられます。
また、猫は症状を表しにくい動物のため、軽症例では、元気がない、食欲がない、程度しか症状を示さない場合もあります。
重症例では失神や突然亡くなってしまうこともあるため、注意が必要です。
心筋の障害が軽度の場合は、数年間に渡り症状を示さずに過ごすことも可能ですが、病気が進行すると、麻酔や手術、猫がストレスを感じること(例えば「捕まえてケージに入れ病院へ行く」などのようなストレス)によっても急激に症状が悪化するケースもあります。
症状が重度の場合は、肺や胸に水がたまる「肺水腫」や「胸水」へ進行し呼吸困難となるリスクが上がります。
その他、心筋の動きが悪くなることから心臓の血流が滞り血管に血栓を詰まらせる「血栓塞栓症」が併発する危険性も増加します。
肥大型心筋症の診断方法
肥大型心筋症の一般的な検査は、X線検査、心電図検査、心エコー検査です。
X線検査では心臓の形態と肺の様子を、心電図検査では不整脈の確認を、心エコー検査では心筋の様子と心臓内の血液の流れを確認します。
必要であれば、血液検査で心筋トロポニン値などの特殊な検査をする場合もあります。
肥大型心筋症の治療方法
肥大型心筋症の治療方法は、薬剤による内科的治療が主流です。
主な治療内容は、心不全の改善と血栓塞栓症の予防です。
血栓塞栓症はあらゆる全身の血管で起こる可能性があるため、特に注意が必要です。
心筋を肥大させる原因疾患が背景にある場合は、その治療を積極的に行います。
症状が進行すると、胸水貯留や肺水腫により重度な呼吸困難を示し、針を胸に刺す胸水抜去治療や酸素室へ入り集中治療が必要になる場合もあります。
予防法や飼い主が気をつけるべき点
猫は病気が存在しても症状を示しにくい動物であるため、症状が軽度であると気づきにくい場合があります。
病気が進行し症状が悪化すると突然死や血栓塞栓症のリスクが上がるため、病気の早期発見が重要です。
愛猫の軽微な体調の変化も見逃さないように、日頃から健康管理をしましょう。
本疾患は、メイン・クーン、ペルシャ、ラグドール、アメリカン・ショートヘアなどの好発品種があることが知られているため、リスクのある品種では定期的に検査をすることが推奨されています。
猫はストレスに敏感な動物のため、ストレスを感じると症状が悪化する可能性があります。
愛猫にとってストレスがない環境作りをしましょう。
猫の肥大型心筋症について、気になることがあれば当院までご相談ください。
宮城県大崎市を中心に診察を行うアイ動物クリニック
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〈参考文献〉
SMALL ANIMAL INTERNAL MEDICINE FORTH EDITION ;interzoo