予防・治療について

2025.07.24  うつる?治る?一緒に飼える?猫エイズ(FIV)と猫白血病(FeLV)の基礎知識

「猫エイズ」や「猫白血病」という言葉を耳にして、不安を感じたことのある飼い主様もいらっしゃるかもしれません。これらはどちらもウイルスによる感染症で、猫の免疫力を大きく低下させる深刻な病気です。

特に野良猫や保護猫を迎えた場合には、感染リスクが高くなるケースもあり、正しい知識と対応が大切になります。初期には目立った症状が出にくく、見過ごされやすいという特徴もあるため、早期発見のための検査も重要です。

今回は、猫エイズと猫白血病の違いや症状、検査方法、予防とケア、そしてよくあるご質問について解説します。

■目次
1.猫のエイズと猫白血病とは?基本知識を解説
2.症状と進行段階|気づきにくい初期症状から末期症状まで
3.検査方法|タイミングと注意点
4.予防と治療の考え方
5.よくある質問(Q&A)
6.まとめ|猫と安心して暮らすために

猫のエイズと猫白血病とは?基本知識を解説

猫エイズとは「猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)」のことで、人間のエイズとは全く異なるウイルスによって引き起こされます。そのため、人間にうつることは一切ありません

猫白血病は「猫白血病ウイルス感染症(FeLV)」と呼ばれ、こちらも猫同士で感染するウイルス性疾患です。

猫エイズも猫白血病も共通して「免疫力が低下し、ほかの病気にかかりやすくなる」という特徴があり、進行すると深刻な健康被害をもたらします。どちらも感染してすぐの段階では症状がほとんど見られず、飼い主様が気づかないまま経過してしまうこともあります。

症状と進行段階|気づきにくい初期症状から末期症状まで

症状は進行度や猫の体質によって異なりますが、以下のような経過をたどることが多くみられます。

<猫エイズの症状>

猫エイズは、感染してもすぐに症状が出るとは限らず、長いあいだ無症状で経過するケースもあります。

▼急性期
感染初期に一時的な発熱やリンパ節の腫れ、軽い食欲不振などが見られることがあります

▼無症状キャリア期(潜伏期)
数ヶ月から数年にわたり無症状で経過することが多く、この間に感染に気づかれにくいのが特徴です。

▼持続性全身性リンパ節症期~エイズ関連症候群・エイズ期
免疫力が徐々に低下し、口内炎慢性的な下痢皮膚炎歯肉炎体重減少などの二次感染がが起こりやすくなります。

<猫白血病ウイルス感染症の症状>

猫白血病ウイルスに感染しても、すべての猫が持続的に感染するわけではありません。若く健康な猫では、初期にウイルスを排除できることもあります。

一方で、ウイルスが体内に残り、持続感染となった場合は以下のような症状が現れることがあります。

▼初期(急性期)
発熱元気消失食欲不振など

▼持続感染時に見られる症状
貧血体重減少、免疫力の低下に伴う二次感染腫瘍(リンパ腫など)の発生

これらの症状だけで感染を判断することは難しく、確定診断には血液検査が必要です。特に初期は無症状のことが多いため、見た目に変化がなくても注意が必要です。そのため、健康そうに見える猫であっても、定期的に検査を受けることが早期発見・早期対処につながります

検査方法|タイミングと注意点

猫エイズと猫白血病感染は、動物病院で行う血液検査によって調べることができます。1つの検査キットで両方の感染症を同時に調べられるため、猫への負担も少なく、結果は15分ほどで分かります。

ただし、感染して間もない時期はウイルス量が少ないため「偽陰性(実際は感染していても陰性と出る)」「偽陽性(感染していないのに陽性と出る)」といった結果が出ることがあります。

そのため当院では、野良猫や外で暮らしていた猫を保護した場合には、以下の流れを推奨しています。

まず初回の検査で感染症の有無を確認する
外の猫との接触がなくなってから2ヶ月間隔離し、その後に再検査を行う

このように一定の期間をおいて再検査をすることで、より正確な診断につながり、猫の健康を守るための適切な判断が可能になります。

予防と治療の考え方

猫エイズや猫白血病と向き合っていくうえで、大切なのは「予防」と「早期の対応」です。感染を防ぐ環境づくりと、発症を遅らせるためのケアによって、猫たちの穏やかな日々を守ることができます。

<予防>

感染を防ぐためには、完全室内飼育を徹底し、外部の猫との接触を避けることが何より重要です。特に多頭飼育を検討している場合は、先住猫と新しく迎える猫の検査を済ませたうえで、慎重に同居を進めるようにしましょう。

また、猫白血病には予防ワクチンがあります。猫エイズに関しても一部でワクチンがありますが、感染を完全に防ぐのは難しいとされています。そのため、猫エイズの予防には、ワクチン接種に加えて、日頃から感染リスクの少ない生活環境を整えることが大切です。

▼ワクチンについてはこちらから

<治療とケア>

現時点では、猫エイズ・猫白血病ともに完治させる治療法は確立されていません。しかし、適切なケアを続けることで、発症を遅らせたり、症状の進行をゆるやかにしたりすることが可能です。

たとえば、次のようなケアを取り入れることで、体調の維持や生活の質の向上につながることが期待されます。

免疫力をサポートするサプリメントの使用
インターフェロンなどの治療薬による体調管理
二次感染の予防を目的とした定期的な健康診断

これらを通じて、猫の体調を見守りながら、できるだけ長く元気に過ごせるようにサポートしていきます。

よくある質問(Q&A)

Q:猫エイズや猫白血病は人間にうつりますか?
A:絶対にうつりません。 どちらも猫同士でのみ感染し、人間や他の動物にうつることはありません。

Q: 猫エイズや猫白血病は治りますか?
A:どちらも完治は困難ですが、発症せずに長く元気に過ごしている猫もたくさんいます。適切なケアや体調管理を続けることが大切です。特に猫白血病は進行が早い傾向にあるため、早めの対応が重要です。

Q:他の猫と一緒に飼っても大丈夫ですか?
A:感染リスクは高くありませんが、唾液や咬み傷からうつることがあります。特に猫白血病は、食器の共有やグルーミングでも感染することがあるため注意が必要です。

Q:検査はどこで受けられますか?費用はいくらですか?
A:アイ動物クリニックで検査が可能です。費用は4,000円(税別)で、猫エイズと猫白血病を同時に調べることができます。

Q: 室内飼いでも検査は必要ですか?
A:はい、特に保護猫は感染歴がわからないことが多いため、迎える際には一度検査することをおすすめしています。

まとめ|猫と安心して暮らすために

猫エイズや猫白血病は、深刻な感染症ではあるものの、正しく理解し、早期に対応することで、発症を防いだり、進行を抑えたりすることができます。特に野良猫を保護した際は、健康チェックと感染症検査を行い、2ヶ月間の隔離期間を経て再検査するのが理想的です。

当院では、飼い主様と猫の暮らしが少しでも安心なものとなるよう、丁寧な診療とアドバイスを行っています。気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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