2024.05.13 甲状腺疾患について|犬と猫で症状が異なる
甲状腺は首の前部に位置する重要な臓器で、気管を挟んで左右に1つずつ存在し、甲状腺ホルモンを作り出します。
甲状腺ホルモンは細胞の活性化を促進し、新陳代謝を高めることでエネルギー産生を支え、タンパク質や酵素の合成を促進します。また、炭水化物や脂質の代謝にも関与しており、体の正常な成長と発達、体温の維持、心臓の機能など多岐にわたる体のシステムを調節しています。
今回は、犬と猫に最も一般的な二つの甲状腺疾患、甲状腺機能低下症と甲状腺機能亢進症に焦点を当て、その症状、原因、治療法について詳しく解説します。
■目次
1.犬によく見られる甲状腺疾患:甲状腺機能低下症
2.甲状腺機能低下症の症状
3.甲状腺機能低下症の原因
4.甲状腺機能低下症の特徴
5.甲状腺機能低下症の診断法・治療法
6.猫によく見られる甲状腺疾患:甲状腺機能亢進症
7.甲状腺機能亢進症の症状
8.甲状腺機能亢進症の原因
9.甲状腺機能亢進症の特徴
10.甲状腺機能亢進症の診断法・治療法
11.まとめ
犬によく見られる甲状腺疾患:甲状腺機能低下症
犬では甲状腺機能低下症を発症しやすく、甲状腺ホルモンの不足により発症する内分泌疾患です。
甲状腺機能低下症の症状
最もよく見られる症状は、散歩に行きたがらない、元気がないなど、活動量の低下です。
体温と心拍数の低下も起こるため、犬は寒がりになり、暖房の前から動かなくなることがあります。
皮膚に関連する症状も顕著で、皮膚が分厚くなる、瞼や唇が垂れ下がって悲しげな表情をする、左右対称の脱毛、皮膚の黒ずみ、治りにくい皮膚炎などが見られます。
甲状腺機能低下症の原因
犬の甲状腺機能低下症は多くの場合、自己免疫性疾患が原因とされています。この状況では、犬の免疫システムが誤って甲状腺組織を攻撃し、その機能を損なうことにより発症します。
どの犬種でも発生する可能性がありますが、特にゴールデン・レトリーバー、ドーベルマン、シェットランド・シープドッグなどの大型犬に多く見られます。また、通常は中高齢の犬に多い疾患ですが、若い犬でも発症することがあります。
さらに、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンの不足が原因で甲状腺機能が低下するケースも報告されています。
甲状腺機能低下症の特徴
よくあるケースとして、皮膚疾患がなかなか治らない際にホルモン検査を行い、甲状腺機能低下症を含む内分泌系の疾患がたまたま見つかることがあります。
甲状腺機能低下症の診断法・治療法
診断は主に血液検査により行われます。この検査で、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンと、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンの値を確認します。これらのホルモン濃度が異常であれば、甲状腺が適切に機能していない可能性が高いと考えられます。
治療は合成甲状腺ホルモン製剤の内服により、不足したホルモンを補います。
甲状腺機能が自然に回復することはほとんどないため、根本的な治癒は望めません。そのため、甲状腺機能低下症の治療は生涯にわたる投薬が必要です。
猫によく見られる甲状腺疾患:甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は、猫における最も一般的な内分泌疾患です。甲状腺の腫瘍化や過形成により甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで起こります。
甲状腺機能亢進症の症状
甲状腺機能亢進症による甲状腺ホルモンの過剰分泌は、代謝を大幅に高めることが特徴です。最も典型的な症状として「活発で食欲旺盛なのに体重が減少する」というものが挙げられます。
その他にも、毛並みの劣化、多飲多尿、落ち着きがなくなる、目が爛々とするなどの症状が現れます。
甲状腺機能亢進症の原因
主に甲状腺の腫瘍(多くは良性)によって発症します。甲状腺ホルモンの過剰生産を引き起こし、その結果、体内の代謝活動が異常に高まります。
甲状腺が大きくなる具体的な原因についてはまだ完全には解明されていませんが、加齢、食事内容、飼育環境、遺伝などが複合的に関与していると考えられています。
甲状腺機能亢進症の特徴
甲状腺ホルモンの過剰分泌は腎臓や心臓にも大きな影響を及ぼし、慢性腎臓病、肥大型心筋症を発症するリスクも高まります。
このため、甲状腺治療と並行して心臓の健康も定期的にチェックすることが重要です。
肥大型心筋症についての記事はこちらから
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甲状腺機能亢進症の診断法・治療法
診断は主に触診と血液検査を行います。触診によって、喉の近くの甲状腺が通常よりも大きくなっているかを確認します。次に、血液検査を行い、血液中の甲状腺ホルモンの数値を測定していきます。
治療は投薬による内科治療と手術による外科治療があります。
内科治療では、主に抗甲状腺薬を用いてホルモンの過剰産生を抑えます。これらの薬は甲状腺ホルモンの生成を直接的に減少させるため、症状の改善が期待できます。しかし、根治を目指す場合には外科治療が選択されることもあります。
高齢での発症が多いことや甲状腺の腫瘍が良性であることから、リスクを考慮して初期段階では薬物療法が優先されることが多くあります。
まとめ
甲状腺の疾患は犬と猫で発生しやすい病気が異なります。
しかし、どちらの病気も中高齢に多いという背景と、特に活動性の変化は飼い主が気づきやすい重要なサインとなります。
そのため、普段から行動や健康状態に注意を払いつつ、定期的な健康診断を欠かさないことが大切です。
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