予防・治療について

2025.09.03  猫の便秘の原因と対処法|何日出ないと危険?獣医師が解説

愛猫の排便が数日見られないと「便秘かな?」と心配になる飼い主様も多いのではないでしょうか。猫の便秘は一時的な生活習慣の乱れで起こることもありますが、背景に病気が隠れている場合もあります。

今回は猫の便秘について、原因やご家庭でできる工夫、病院を受診すべきタイミングまで獣医師の視点から解説します。

■目次
1.猫の便秘とは?正常な排便との違い
2.猫が便秘になる主な原因
3.自宅でできる便秘の対処法と予防策
4.動物病院を受診すべきタイミングと治療法
5.猫の便秘に関するよくある質問(Q&A)
6.まとめ

猫の便秘とは?正常な排便との違い

健康な猫の排便頻度は、1日に1〜2回程度といわれています。ただし、体質や食事内容によっても異なるため「いつもの排便ペース」を把握しておくことが大切です。

便秘と判断されるのは、一般的に3日以上排便がな場合や、便が少量で硬く乾燥している場合です。さらに、トイレで排便姿勢をとっているのに便が出てこないときも、便秘を疑うサインになります。

一見すると「たかが便秘」と思われるかもしれませんが、放置すると体調不良や病気につながるおそれがあります。日常のちょっとした変化でも、早めに気づいてあげることが大切です。

猫が便秘になる主な原因

猫が便秘になる原因はさまざまです。代表的なものとしては以下が挙げられます。

水分不足
運動不足
ストレス(環境の変化、トイレが汚れている、トイレの場所が変わった など)
病気(巨大結腸症、骨盤の狭窄、消化管腫瘍、腸閉塞 など)

そのほかにも、フードの急な変更毛玉の蓄積が影響することもあります。
特にシニア猫では腸の動きが弱まりやすく、また長毛種ではグルーミングで毛を飲み込むことが多いため、便秘や嘔吐を伴う毛球症(毛玉が胃や腸にたまる病気)になりやすい傾向があります。

自宅でできる便秘の対処法と予防策

軽度の便秘や、便秘を繰り返さないための工夫は、ご家庭でも取り入れることができます。ただし、あくまで軽い便秘の場合に限られるため、改善が見られなければ早めに病院にご相談ください。

<水分をしっかりとる工夫>

猫はもともとあまり水を飲まない動物ですが、水分不足は便秘の大きな要因になります。

水飲み場を家の数か所に設置する
こまめに水を入れ替えて新鮮さを保つ
フードにぬるま湯を加える、またはウェットフードを取り入れる

このような少しの工夫で水分摂取量を増やすことができます。

<やさしいマッサージ>

マッサージは愛猫とのコミュニケーションにもなり、リラックス効果と腸の動きを助ける効果が期待できます。

▼マッサージの一例

①首から尾に向かって撫でる
毛並みに沿って、首の付け根から背中、尾の方向へとやさしく撫でてあげましょう。全身がリラックスしやすくなります。

②お腹を円を描くように撫でる
お腹を両手でやさしく支えながら、時計回りに小さな円を描くように撫でてあげます。腸の動きをサポートしやすくなります。

強く押す必要はなく「気持ちよさそうだな」と感じる程度で十分です。

<運動の習慣づけ>

腸の動きは体を動かすことで活発になります。
おもちゃで遊ぶ時間を少し増やしたり、キャットタワーを活用したりと、日常に運動を取り入れてみましょう。特にシニア猫では運動量が減りがちなので、無理のない範囲で「遊び」を意識してあげることが大切です。

<トイレ環境の見直し>

猫にとって排便環境はとても重要です。

いつも清潔に保つ
静かで落ち着ける場所に設置する
頭数+1個のトイレを用意する(2匹なら3個)

これらを整えることで、排便のしやすさにつながります。

<フードの工夫>

便秘がちな猫には、水分を含むウェットフード繊維質を含む療法食が役立つこともあります。ただし、フードの切り替えは1週間ほどかけて少しずつ行いましょう。急に変えると、かえってストレスや下痢・嘔吐の原因になることがあります。
また、愛猫の年齢や体質、持病の有無によって適したフードは異なります。獣医師に相談しながら進めることで、安心して食事管理ができ、便秘の予防にもつながります。

動物病院を受診すべきタイミングと治療法

「便秘くらい」と軽く考えてしまうかもしれませんが、放置すると体に負担をかけてしまうことがあります。次のようなサインが見られるときは、できるだけ早く動物病院にご相談ください。

<受診の目安>

3日以上排便がない
嘔吐がある(食後すぐ吐く、繰り返し吐くなど)
食欲不振(フードを食べない、食べてもすぐやめる)
元気がない/動きが鈍い(遊ばない、ずっと寝ている)
お腹を触ると嫌がる、痛がる

これらの症状がある場合は、単なる便秘ではなく腸閉塞や巨大結腸症など緊急性の高い病気が隠れているケースもあります。

<動物病院での主な治療方法>

診察ではまず、問診と触診を行い、必要に応じてレントゲンや超音波検査で便や腸の状態を確認します。そのうえで次のような処置を行います。

浣腸や摘便:便を柔らかくして排出を助けたり、直接取り出す処置
補液(点滴):脱水がある場合に体内の水分を補い、便を出やすくする
薬の処方:腸の動きを助ける薬や便を柔らかくする薬を使うこともある

<慢性的な便秘の場合>

便秘を繰り返す猫には、食事療法や環境改善が大切になります。繊維質を調整した療法食や、水分摂取を増やす工夫を行うことで、腸内環境を整えていきます。また、巨大結腸症や骨盤の異常がある場合は、継続的な管理や外科的処置が必要になるケースもあります。

飼い主様だけで判断するのは難しいことも多いため「少し変だな」と感じたら早めに相談することが一番の安心につながります。 当院でも飼い主様と一緒に原因を探し、愛猫に合った治療や予防法をご提案しています。

猫の便秘に関するよくある質問(Q&A)

Q: 猫は毎日うんちしないといけませんか?
A:2〜3日出なくても、元気や食欲があれば大きな問題ではない場合もあります。ただし長引くようなら注意が必要です。

Q:人間の便秘薬をあげても大丈夫ですか?
A:危険ですので絶対にやめましょう。必ず獣医師に相談してください。

Q: フードを変えたら便秘になりました、関係ありますか?
A:猫によってフードとの相性があり、便秘につながることがあります。切り替えは慎重に行いましょう。

Q:プロバイオティクスは効果がありますか?
A:便秘の原因のひとつとして、腸内細菌のバランスの乱れが関係していることがあります。乳酸菌やビフィズス菌といったプロバイオティクスは、腸内環境を整えるサポートになり、便秘の改善や予防に役立つ可能性があります。

まとめ

猫の便秘は一時的な生活習慣の乱れで起こることもありますが、腸の病気や体の異常が隠れている場合もあります。「たかが便秘」と軽視せず、日々の小さな変化に気づいてあげることが、愛猫の健康を守る第一歩です。

ご家庭でできる工夫もありますが、愛猫の体質や年齢によって最適な方法は異なるため、獣医師と一緒に取り組むことでより安心して改善・予防につなげられます。

もし気になることがあれば、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

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