予防・治療について

2026.05.21  FIPと診断された猫が回復するまで|当院での実際の治療経過と完治までの記録

FIP(猫伝染性腹膜炎)は、かつて「助けることが難しい病気」とされてきました。しかし近年では、治療の選択肢が増え、実際に回復して元気に過ごせるようになる猫も見られるようになっています。

しかしその一方で、FIPはまだ情報が少なく「診断されたけれど、これからどうなるのか分からない」「本当に治療できるのか不安」と感じる飼い主様もいらっしゃるかと思います。

そこで今回は、2025年から2026年にかけて当院で診療した、FIPと診断され、治療を経て元気に過ごせるようになった猫の症例をご紹介します。

■目次
1.症例紹介|来院時の状態から診断までの流れ
2.治療の経過|回復までの具体的な変化
3.治療後の様子|現在の生活
4.当院が治療で大切にしていること
5.まとめ|FIPと診断されても、あきらめないでください

症例紹介|来院時の状態から診断までの流れ

サイベリアンの猫2匹の写真。手前にいる今回の症例の猫は、FIP治療開始前で、腹水によるお腹の張りや元気・食欲の低下が見られていた時期の様子。

今回ご紹介するのは、1歳のサイベリアンの男の子(未去勢)の症例です。

飼い主様が最初に気づかれたのは「お腹が張っている」「食欲が落ちている」という変化でした。症状は1〜2週間ほど前から続いていたとのことです。

来院時には元気も低下しており、腹部の張りも確認されたため、まずは身体検査血液検査などを行いました。FIPが疑われる所見が認められたため、腹水を抜去して遺伝子検査も実施したところ、数日後に検査結果で陽性が確認され、FIPと診断しました。

治療の経過|回復までの具体的な変化

治療開始後は、状態を慎重に確認しながら経過を見ていきました。

<治療初期|最も状態が厳しかった時期>

診断時の状態は決して良好とはいえず、厳しい状況でした。

当院では、モルヌピラビルを中心とした治療を開始し、初期は状態が不安定だったため、インターフェロンの注射も併用しています。

治療開始後の約2週間は、ほぼ毎日通院しながら状態を確認していきました。

FIPは、治療を始めた直後が特に重要になることも多く「本当に反応してくれるだろうか」と慎重に経過を見守っていた時期でもありました。

<改善の兆し>

治療開始から5日ほど経過した頃には、自分から食事を取る様子が見られるようになりました。さらに1週間後には食欲も徐々に回復し、10日後には腹水の減少も確認できています。

こうした変化が少しずつ見られるようになったことで「治療の効果が出ている」という実感が得られるようになりました。

FIP治療では、改善のスピードに個体差がありますが、この症例では比較的順調に回復へ向かっていった印象があります。

<回復期>

治療を継続する中で、腹水は徐々に減少していき、約12週間(84日前後)をひとつの目安として経過を確認した時点では、腹水はほぼ消失していました。

モルヌピラビルの投与終了後も大きな体調の崩れはなく、現在も元気に過ごしています。

治療後の様子|現在の生活

FIP治療後のサイベリアンの猫。目の輝きや表情にも元気が戻り、安定した様子で過ごしている状態。

現在は食欲や活動量も安定しており、普段どおりの生活を送っています。来院当初の状態を考えると、ここまで元気に過ごせるようになったことは、私たちにとっても非常に印象深い症例でした。

この症例からあらためて感じるのは、FIPは「助からない病気」ではなくなってきているということです。

もちろん、すべての症例が同じ経過をたどるわけではありません。しかし、早い段階で状態を把握し、適切な治療につなげていくことで、回復できる可能性がある病気へと変わってきています。

また今回の症例では、飼い主様が非常に積極的に治療に向き合ってくださったことも大きな支えとなりました。「できることは何でもやってほしい」という思いで一緒に治療を進めてくださったことで、治療の選択肢を広げながら進めることができました。

FIPの治療では、私たち医療側と飼い主様が同じ方向を向いて取り組んでいくことがとても重要だと、あらためて感じています。

当院が治療で大切にしていること

FIPは、診断や治療の判断が難しい病気だからこそ、当院では「できることを一つずつ丁寧に積み重ねること」を大切にしています。

論文や新しい知見にも目を通しながら、その子にとって今できる最善の選択肢は何かを常に考えています。また、治療には費用や通院の負担も伴うため、一方的に治療を進めるのではなく、飼い主様としっかり相談しながら方向性を決めていくことを重視しています。

FIPはまだ分からないことも多い病気ですが、それでも「もう方法がない」と決めつけず、選択肢を増やしながら向き合っていくことが大切だと考えています。

まとめ|FIPと診断されても、あきらめないでください

FIP治療後のサイベリアンの猫。毛づやや表情が改善し、落ち着いた様子で横になっている状態。

かつてFIPは、不治の病として語られることの多い病気でした。しかし現在では、医療の進歩によって、実際に回復して元気に生活できるようになる猫も見られるようになっています。

もちろん、すべての症例で同じ結果になるわけではありません。それでも、状態が厳しい段階から回復につながるケースがあることは、ぜひ知っていただきたいと考えています。

アイ動物クリニックでは、大崎市・古川周辺でFIPに不安を抱える飼い主様からのご相談や、セカンドオピニオンにも対応しています。「もしかしてFIPかもしれない」「診断を受けたけれど、これからどうしたらよいか分からない」そんなときは、まずは一度ご相談ください。

▼FIPの初期症状や検査についてはこちらからご覧いただけます

 

【監修者】アイ動物クリニック院長 瓜生 風馬(獣医師)

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