2025.04.25 犬猫のけいれん発作、慌てないで!|てんかんの正しい知識と対処法
愛犬や愛猫が突然けいれんを起こしたら、驚きや不安でどう対処すればよいのか戸惑ってしまう飼い主様が多いのではないかと思います。特に犬では、てんかんによる発作は決して珍しいものではなく、すべての発作が深刻なわけではありません。ただし、発作の種類や原因によって適切な対処法が異なるため、事前に正しい知識を持っておくことで、いざという時も落ち着いて対応しやすくなります。
今回は、犬や猫のてんかんについて、発作の見分け方や対処法、診断・治療のポイント、日常生活での注意点まで、飼い主様が安心して向き合えるように詳しく解説します。
■目次
1.発作時に見られる症状
2.発作が起きた時の対処法
3.てんかんの原因と診断
4.治療方法と薬の管理
5.日常生活での注意点
6.よくある質問(Q&A)
7.まとめ
発作時に見られる症状
発作の状況によって症状の現れ方は異なりますが、よく見られる兆候としては以下のようなものが挙げられます。
・全身の硬直や痙攣(手足が突っ張る、ガクガクと震える)
・呼びかけに反応しない、意識がないような状態になる
・よだれが多くなる、口から泡を吹く
・無意識に排尿や排便をしてしまう
・発作後は混乱した様子で、フラフラ歩いたり、ぼんやりしたりする
発作は数秒〜数分程度で自然に収まることが多いものの、5分以上続く場合や短時間で繰り返し発作が起こる場合は、緊急性が高いため早めの受診が必要です。
発作が起きた時の対処法
いざ発作が起きると慌ててしまいがちですが、まずは落ち着いて愛犬・愛猫の安全を確保しましょう。
<応急処置の手順>
1. 安全な場所を確保する
発作中は愛犬・愛猫自身で動きをコントロールできません。周囲にぶつかるものがないか確認し、頭を打たないように注意してください。また、部屋はできるだけ暗めにし、静かで落ち着いた環境を作ってあげましょう。
2. 口の中には手を入れない
「舌を噛むのでは?」と心配される方もいらっしゃいますが、発作中に口に手を入れると、反射的に噛まれてしまう危険があります。絶対に口に手を入れないでください。
3. 発作の時間を測る
発作は1〜2分で収まることがほとんどですが、5分以上続いたり、繰り返し発作が起きる場合は注意が必要です。
4. 発作後は静かに見守る
発作後は意識が混乱し、うまく歩けなかったり、不安そうにすることがあります。刺激を与えず、優しくそばにいてあげましょう。
<してはいけないこと>
・無理に口を開ける、口の中に手を入れる
・大きな声で呼びかける、揺さぶる
・発作直後に水や食事を与える(誤嚥の危険があるため)
<緊急受診の目安>
以下のような場合は、すぐに動物病院へご相談ください。
・発作が5分以上続く
・短時間に何度も発作を繰り返す
・発作後も意識が戻らない、ぐったりしている
・呼吸が荒く、動けない状態が続く
<発作時の様子は動画で記録を>
発作が起きた際、可能であればスマートフォンなどで動画を撮影しておくと、診断の助けになります。獣医師が直接発作を確認できない場合でも、動画があれば正確な判断につながります。
てんかんの原因と診断
てんかんにはいくつかの原因があります。それぞれの特徴を理解しておくことで、適切な対処がしやすくなります。
<主な原因>
てんかんの原因には、大きく3つのタイプがあります。
1. 特発性てんかん
はっきりとした原因はわかっていませんが、遺伝的な要素が関係していると考えられています。特に1〜3歳の若齢の犬猫に多く、シェパード、ボーダーコリー、柴犬、フレンチブルドッグなどは発症リスクが高いとされています。
2. 症候性てんかん
脳腫瘍、脳炎、外傷など、明確な疾患が原因となって発作が起こります。特に老齢の犬猫で初めて発作が見られた場合は注意が必要です。
3. 反応性発作
低血糖や肝疾患、中毒など、脳以外の原因によって引き起こされる発作です。
<「発作」と「失神」の違い>
見た目が似ているため「発作」と「失神」は混同されやすいですが、実は原因も症状も異なります。
・発作:脳の異常が原因で、突然意識を失い、手足が痙攣するケースが多く見られます。前触れがなく始まるのが特徴です。
・失神:循環器の問題(心臓病など)が原因で、血圧の低下により意識を失います。痙攣はほとんど見られません。
見分けが難しい場合もありますので、違和感がある場合は早めにご相談ください。
▼犬や猫の心臓病についてはこちらから
▼失神の原因となる犬の不整脈についてはこちらから
<診断方法>
てんかんの原因を正確に特定するため、次のような検査を行います。
・血液検査:代謝異常や内臓疾患の有無を確認します。
・MRI検査:脳腫瘍や脳炎など、脳の異常の有無を詳しく調べます。
・脳脊髄液(CSF)検査:脳炎などの疑いがある場合に実施します。
治療方法と薬の管理
てんかんは長期的な治療が必要な病気ですが、適切な治療を続けることで発作をコントロールし、愛犬・愛猫の生活の質を保つことが可能です。
<主な治療法>
てんかんの治療では、抗てんかん薬の投与が一般的です。代表的な薬としては、フェノバルビタール、ゾニサミド、レベチラセタムなどがあり、これらは脳の電気的な異常興奮を抑えることで発作の発生を防ぎます。
<投薬スケジュールの重要性>
抗てんかん薬は、血中濃度を一定に保つことが効果を発揮するためのポイントです。決められた時間に毎日欠かさず飲ませることが大切で、飲み忘れたり、時間がずれたりすると発作のコントロールが難しくなることがあります。獣医師の指示に従ってスケジュールをしっかり守りましょう。
<気をつけたいこと>
抗てんかん薬は長期間の服用が前提となるため、副作用にも注意が必要です。代表的な副作用には、眠気、ふらつき、食欲の増加などがあります。また、まれに肝臓や腎臓に影響が出ることもあるため、定期的な血液検査で内臓の健康状態を確認していきましょう。
薬の種類や投与量の調整が必要な場合もあるため、気になる症状があれば早めに動物病院へご相談ください。
日常生活での注意点
てんかん発作のリスクを減らすためには、日常生活の管理が大切です。生活リズムや環境を整え、安心できる暮らしをサポートしてあげましょう。
<発作の予防につながる生活管理>
まず、生活リズムを整えることが発作の予防につながります。毎日同じ時間に食事や散歩を行い、規則正しい生活を心がけましょう。特に睡眠不足は発作のリスクとなるため、静かで落ち着いた寝床を用意してあげることも大切です。
また、日常生活においてはストレスをできる限り避けることも大切です。大きな音や急激な環境の変化、過度な刺激はストレスの原因となるため、可能な限り穏やかで安心できる環境を整えてあげると良いでしょう。
<発作のきっかけとなりやすい要因>
日頃から以下のような要因に注意し、愛犬・愛猫が安心できる環境を整えてあげましょう。
・強い光やフラッシュ
・大きな音(雷、花火、掃除機など)
・急激な温度変化
・過度な運動や興奮
<運動と食事のポイント>
激しい運動や興奮を伴う遊びは避け、軽い散歩や室内での穏やかな遊びを取り入れると良いでしょう。過度な興奮は発作のきっかけになるおそれがあるため、無理のない範囲で楽しめる運動を意識してあげてください。
また、血糖値の急激な変動は発作を引き起こすリスクとなるため、1日2〜3回、決まった時間に食事を与えるようにしましょう。急いで食べると血糖値の急上昇につながることもあるため、食べるスピードにも気を配ってください。
こうした日常の習慣を整えることで、発作のリスクを少しでも減らすことができます。
よくある質問(Q&A)
Q1:発作の予兆はありますか?
A:発作の前に特定の行動を取る犬や猫もいます。例えば、特定の場所に行きたがる、興奮しやすくなるなどです。実際に、当院で診ていた猫の中には「トイレに入るたびに発作が起きる」というケースもありました。ただし、すべての犬猫に明確な予兆があるわけではなく、突然発作が起こることも少なくありません。
Q2:他の病気との関連性は?
発作は、低血糖や肝疾患、腎疾患などの内臓の異常が原因となることもあります。そのため、当院ではまず血液検査で異常がないかを確認し、必要に応じてレントゲンやエコー検査も行っています。
血液検査で問題がなければ、脳腫瘍や脳炎など頭蓋内の異常が疑われるため、MRI検査が必要となります。MRI検査は当院では機器がないため実施できませんが、必要な場合は仙台市内の専門病院をご紹介いたします。
Q3:留守番はさせても平気?
発作がコントロールされていれば基本的には問題ありませんが、長時間の留守番はできるだけ避けることが望ましいでしょう。また、頻繁に発作がある場合や重篤な発作のリスクがある場合は、なるべく留守番はさせず、誰かが見守れる環境を作ることが推奨されます。
まとめ
犬や猫のけいれん発作は、目の当たりにするととても不安になりますが、適切な対処と継続的なケアによって、愛犬・愛猫の生活の質を守ることができます。発作時の正しい対応や、生活習慣の見直しによって、発作のリスクをできる限り減らすことが大切です。
また、発作の原因は脳の異常だけでなく、代謝異常や内臓疾患が関係している場合もあります。そのため、適切な検査を受けることが、より良い治療への第一歩となります。「いつもと違うかも」と感じたら、早めの相談が大切です。少しでも不安があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
■関連記事はこちらから
宮城県大崎市を中心に診察を行うアイ動物クリニック
0229-22-3430
診療案内はこちらから