2023.04.28 犬の僧帽弁閉鎖不全症について|小型犬でよくみられる病気
愛犬に「咳が増えた」「疲れやすい」「呼吸が苦しそう」などの症状はありませんか?
このような症状がみられたら僧帽弁閉鎖不全症の可能性があります。
今回は、飼い主にとって身近な病気のひとつである犬の僧帽弁閉鎖不全症について説明します。
僧帽弁閉鎖不全症の原因
僧帽弁閉鎖不全症は、心臓から体へ血液を送る働きをしている僧帽弁の機能に障害が起きることで発症する疾患です。
犬では多くみられる一般的な疾患であり、中高齢の小型から中型犬に多くみられます。
本疾患の原因は明らかになっていませんが、遺伝的要因が疑われています。
一般的に罹患する犬種は以下のようなものがあげられます。
◆トイ・プードル
◆ミニチュア・プードル
◆ミニチュア・シュナウザー
◆チワワ
◆ポメラニアン
◆フォックス・テリア
◆コッカー・スパニエル
◆ペキニーズ
◆ボストン・テリア
◆ミニチュア・ピンシャー
◆ウィペット
◆キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
などが報告されています。
日本においては、小型室内犬の飼育頭数が多いことから比較的、遭遇率の高い身近な疾患です。
僧帽弁閉鎖不全症の症状
僧帽弁閉鎖不全症の一般的な症状は、運動時に疲れやすく、呼吸回数が増加し、咳をすることがあげられます。
症状が悪化するにつれて、安静時の呼吸回数も増加し、夜間や早朝にも発咳が起こる傾向があり、さらには、重度の心不全から失神や呼吸困難を起こす危険性があります。
特に肺水腫と呼ばれる状態は、呼吸ができなくなり、命を落とす可能性が高い、非常に危険な状態です。
僧帽弁閉鎖不全症は、このような緊急性の高い状態になる可能性が常にあるため、特に注意が必要な病気です。
また、病気の初期では症状を示さないこともあるため、リスクの高い犬種では症状が進行する前に、早期発見することが重要です。
僧帽弁閉鎖不全症の診断方法
僧帽弁閉鎖不全症は心臓の疾患であるため、診断には心臓の精密検査が必要です。
一般的な診断方法は、聴診、X線検査、心電図検査、心エコー検査にて心臓の状態を評価します。
これらの検査で得られた心機能評価と発咳や呼吸困難などの全身症状から総合的に診断します。
症状が進行すると、膵炎や腎不全などの合併症を併発する可能性も増加するため、必要であれば血液検査を行います。
僧帽弁閉鎖不全症の診断は、様々な検査から総合的な判断をすることが、正確な診断に必要です。
僧帽弁閉鎖不全症の治療方法
僧帽弁閉鎖不全症の治療方法は、薬物による内科的治療と手術による外科的治療があります。
一般的には薬物による内科的治療が選択されることが多く、手術による外科的治療は実施可能な施設が限られているため一般的ではありません。
薬物による内科的治療は、病態の進行状態に応じたガイドラインがありがあり、これに従って治療を行うケースが一般的です。
薬物による内科的治療が選択されると、一生涯に渡る内服治療が開始します。
このような長期間に渡る治療は、経済的にも体力的にも飼い主様に大きく負担がかかります。
安心して愛犬の長期治療を行うためには、各ご家庭の状況に合った治療法を選択することが重要です。
予防法や飼い主が気をつけるべき点
僧帽弁閉鎖不全症は、まだ症状の現れない初期段階で病気に気づくことが大切です。
病気の初期段階から適切な治療を行うことで、病気の進行を緩めることが可能です。
特に発症リスクの高い犬種では、定期検査を受けることが推奨されます。
また、本疾患は肺水腫と呼ばれる緊急性の高い状態になる可能性があります。
症状が落ち着いていても、急悪化することもあるため、呼吸困難などの症状の急変には十分に注意しましょう。
まとめ
僧帽弁閉鎖不全症は、心臓から体へ血液を送る働きをしている僧帽弁の機能に障害がおこることにより発症する病気であり、犬では多くみられる一般的な疾患です。
本疾患は中高齢の小型から中型犬に多くみられ、加齢と伴に発生率も上昇することから、リスクのある犬種では中年齢頃から定期検査を受けることが推奨されます。
症状は、運動時に疲れやすく、呼吸回数が増加し、咳をすることがあげられます。
症状が悪化すると、重度の心不全から失神や呼吸困難を起こす危険性があります。
治療方法は、病態の進行状態に応じたガイドラインに沿った薬物による内科的治療が一般的です。
僧帽弁閉鎖不全症について、疑問や気になることがあれば、お気軽に当院までご相談ください。
宮城県大崎市を中心に診察を行うアイ動物クリニック
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〈参考文献〉
SMALL ANIMAL INTERNAL MEDICINE FOURTH EDITION 上巻; interzoo